セッション情報 ワークショップ1(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

非B非C型肝癌を見落とさないための方策

タイトル 肝W1-8:

NBNC肝細胞癌の診断時高度進行例を減少させるための病診連携の重要性

演者 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 多田 俊史(大垣市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】NBNC肝細胞癌(NBNC-HCC)診断時のサーベイランス形態と進行度,および診断後の生存率についてウイルス肝炎を背景とする肝細胞癌(viral-HCC)と比較検討した。【方法】1991年~2011年に当院で診断した肝細胞癌1741例を対象とし,診断時のstage,サーベイランス形態(A群:当院でのサーベイランス・B群:近医診療所でのサーベイランス・C群:サーベイランスなし)および診断後の予後をNBNC-HCC(n=233)とviral-HCC(n=1508)で比較した。【成績】診断時のstageをA・B群で比較すると,stage I/II/IIIの症例はviral-HCCでA群40.9/39.3/15.9%・B群15.4/37.1/28.0%,NBNC-HCCではA群34.8/36.4/18.2%・B群7.4/39.5/34.6%といずれの場合もB群でstage Iが少なかった(いずれもp<0.0001)。一方診断後の生存率はviral-HCC・NBNC-HCCいずれの場合もC群でA・B群に比し有意に低かった(いずれもp<0.0001)が,viral-HCCではB群の生存率がA群より低かった(p<0.0001)のに対し,NBNC-HCCではA・B群に差が認められなかった(p=0.8070)。Stage別ではviral-HCCでStage IとIIの生存率に差がみられたのに対し(p<0.0001),NBNC-HCCではStage IとIIの生存率に差がみられなかった(p=0.1717)。【結論】viral-HCCでは専門施設と診療所でサーベイランスされていた症例の間で診断後の生存率に有意な差がみられたのに対し,NBNC-HCCでは両者に差がみられなかった。これはNBNC-HCCにおいては超早期に発見されなくてもある程度早期に診断されれば同等の生命予後が期待できるためと考えられた。NBNC-HCCのリスク群においては背景肝に対する抗ウイルス療法等の対策の必要がなく,ある程度熟達した診療所におけるサーベイランスが可能と思われる。NBNC-HCCハイリスク群囲い込みの指標がなくリスク群全例を専門施設でサーベイランスするのが困難な現状において,病診連携を利用しての診療所におけるサーベイランスは診断時高度進行例を減少させるための1つの方策となりうると考えられた。
索引用語 NBNC肝細胞癌, サーベイランス