セッション情報 |
シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)
ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療
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タイトル |
肝S3-2:ミニマル肝性脳症の診断とその特徴
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演者 |
須田 剛士(新潟大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
小師 優子(新潟大医歯学総合病院・栄養管理部), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】コンピューターを用いた神経精神機能検査(NP)によるミニマル肝性脳症(MHE)診断の問題点、ならびに診断されたMHEの特徴を明らかとする。【方法】肝細胞癌の治療を目的に入院した48例(男:女=39:9、68.8±8.6歳、Child-Pugh 5、6、7、8、9点=24、12、7、1、3(評価不能1)、HBV、HCV、HBV+HCV、Alcohol、NASH、PBC=13、18、1、11、4、1、NH3:85.9±39.5 μg/dl)を対象として、日本肝臓学会配布のソフトを用いたNPを入院日と入院4日後に施行し、臨床病理学的な指標との関連を解析した。【成績】NP8項目の正常データは40歳-69歳までに限られるため、反応時間A、B、Cに関しては2次多項式回帰、それ以外は線形回帰により各年齢の90パーセンタイルを算出した。各項目の相関係数r2はそれぞれ0.77-0.99と良好であった。誤答無く90パーセンタイル以内であることを正常とした場合、8項目の各正常率は88、90、29、96、88、96、100、100%で、図形並べ(FP)の正常率が29%と極端に低かった。また、FPを除く単一項目に再現性の無い異常を示す例が6例認められた。単一項目の経時的異常か、複数項目の異常をMHEの診断基準とした場合、異常のない26例、FPの異常でMHEと判断される16例、ならびにFPとは無関係にMHEと判断される6例に分別され、16例に対して6例のNH3値が有意に高値であった(106 vs 62.5 μg/dl、メディアン、p<0.05)。以上より、以後FPを除く7項目で診断を行った。MHEは12%に認められ、高齢(p=0.063)でChild-Pughが高値(p=0.071)、呼吸商が低値(p=0.099)の傾向が認められた。また、有意に骨格筋量が減少し(p=0.040)、BMIが大きかった(p=0.0079)。さらにMHE陽性例において脂肪からのエネルギー摂取割合は低値(p=0.0061)で、呼吸商と有意な正の相関を示した(p=0.039)。【結論】回帰曲線による90パーセンタイルの設定と、FPを除く単一項目における経時的異常、あるいは複数項目の異常がMHE診断基準の候補と考えられた。また、肝予備力低下時における脂肪摂取量の低下がMHEを助長する可能性が示唆された。 |
索引用語 |
ミニマル肝性脳症, 神経精神機能検査 |