セッション情報 ワークショップ1(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

非B非C型肝癌を見落とさないための方策

タイトル 肝W1-14:

HBs抗原陰性・HCV抗体陰性肝細胞癌切除例の検討

演者 中西 一彰(北海道大大学院・消化器外科学分野IDELIMITER北海道社会保険病院)
共同演者 神山 俊哉(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 武冨 紹信(北海道大大学院・消化器外科学分野I)
抄録 【背景・目的】わが国では肝細胞癌の90%以上がウイルス性慢性肝炎を背景としているが、それらの持続感染を認めない症例も少なからず経験される。、HBs抗原陰性・HCV抗体陰性(NBNC)肝細胞癌切除例を検討した。【対象・方法】2001-2010の肝細胞癌初回肝切除462例を対象とし以下の検討を行った。1.HBs抗原、HCV抗体別の症例数と背景因子・切除成績。2.NBNC群における背景因子と切除成績。【結果】1.HBs抗原のみ陽性(B群)195例(42.2%),HCV抗体のみ陽性(C群)138例(29.9%),HBs抗原陽性・HCV抗体陽性(BC群)13例(2.8%),NBNC群116例(25.1%)。NBNC群の年次推移の一定の傾向は認めなかった。NBNC群はC群とともにB群に比べ有意に高齢であり、ICG15分停滞率はC群より有意行い、ヒートマップを作成。2)miRDeep2を用いて新規miRNA探索。hg19にマッピングとRNA二次構造解析を行い、新規miRNA候補を抽出。複数のサンプルで検出されたものを新規miRNA候補とした。【成績】1検体あたり平均1200万リード、miRBaseへのマッピング率は平均18.72%、hg19は83.73%になった。1)1496個のmiRNAのうちP-Valueが計算できたのは、721個。110個のmiRNAが発現量に有意差がついた。発現量の平均=0、分散=1となるように標準化し、発現パターンをクラスタリングしてヒートマップを作成。CH-B群はCH-C、PBC、健常者群と明確にクラスターを異にした。2)miRDeep2での新規miRNA予測では第7染色体に存在する領域がCH-B血清内に特異的に発現している新規miRNAの候補、ちHBV既感染は53.8%であった。HBV既感染の有無で腫瘍因子に有意な差はなく、切除成績にも差はなかった。NBNC群の有意な予後因子は多変量解析で腫瘍個数と組織学的門脈侵襲であった。【考察・結語】NBNC群の肝細胞癌では、肝障害の程度にかかわらずHBVの関与が示唆された。糖尿病やアルコール多飲症例においてもHBV既感染が発癌に関与している可能性がある。背景因子や術式による予後に差はなく、発癌の原因による治療方針の変更は必要ないと思われた。
索引用語 NBNC肝細胞癌, HBV既感染