セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 肝S3-3:

近赤外線トポグラフィーを用いたミニマル肝性脳症診断の検討―NP testとの比較

演者 中西 裕之(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】近赤外線トポグラフィー(near infrared spectoroscopy;NIRS)、NP testを用いて、ミニマル肝性脳症の病態を検討する。【方法】対象は顕性肝性脳症のない肝硬変40例。年齢71±9.6、性別M:F 18:22 、Child Pugh A/B/C 15/16/9。NIRS、脳波、脳MRI、Neuropsychological test結果を比較検討した。NIRS上課題負荷開始10 秒後の前頭葉のoxyhemoglobin濃度上昇が0.15mMmm以上の脳機能良好群vs脳機能不良群に分け、脳波基礎律動徐波化、栄養指標であるMaastricht index、NH3、脳MRI検査結果、Neuropsychological test結果、生命予後を検討した。【結果】NIRS上脳機能良好(n=24)vs不良群(n=16)における脳波基礎律動徐波化頻度は33% vs 81.2%と脳機能不良群で高頻度であった(p=0.01)。脳MRI上の淡蒼球T1 high intensity出現頻度は脳機能良好群vs不良群で37.5%vs76.7%であった。NH3値は57.6±44.6 vs 113.4±81.3であった(p<0.05)。Maastricht indexは4.88 ±2.83 vs 6.87±1.86と脳機能良好群で低値であった(p<0.05)。Neruopsychological test(NPtest)とNIRSの比較ではNCT-A完遂時間はNIRS上の脳機能低下に伴って延長する傾向がみられた。NCT-Bは、難易度がやや高く、高齢者では時間を要する傾向があった。Figure position test、 Block design test、Reaction timeとNIRSの比較では、高齢者では時間を要した。生命予後の比較では、NIRSで脳機能良好vs不良群では1年95.1vs65.6 % , 3年75.1vs56.2 % , 5年75.1vs37.4 %であった。【結論】顕性肝性脳症を呈さない肝硬変患者において、NIRS上課題開始早期の脳機能賦活が低下している症例が存在した。これらの症例は、NPtest上NCT-A完遂時間の延長を認め、低栄養、NH3高値、脳波基礎律動徐派化、MRI淡蒼球T1 high intensityを伴っており、ミニマル肝性脳症と考えられた。NP test完遂困難な高齢者においてもNIRSは有用であり、両者を組み合わせることでミニマル肝性脳症の診断精度向上が期待され、早期治療介入が可能となるものと考えられた。
索引用語 NIRS, ミニマル肝性脳症