抄録 |
[目的] 高齢化社会が進むにつれて、高齢者C型肝炎患者に対する抗ウイルス療法の是非が問題となっている。今回、高齢者C型慢性肝炎に対するPeg-IFN/RBV療法の抗ウイルス効果ならびに発癌抑制効果を検討した。[方法] <検討1> Peg-IFN /RBVを標準投与量にて開始したC型慢性肝炎 (≧5log IU/ml)754例(1/2型=497/257)を対象とし、年齢別の治療効果と治療効果に関与する因子を検討した。<検討2> Peg-IFN/RBVを施行した65歳以上のC型慢性肝疾患649例(平均年齢:68.1±2.6歳、男/女=274/375例、平均観察期間:41.4±15.9ヶ月)を対象とし、Cox比例ハザードモデルを用いて肝発癌に関与する因子を検討した。[成績] <検討1> 55歳未満/55-59/60-64/65-69/70歳以上において、副作用中止率は、6/8/12/19/20%と高齢になるにつれて増加し、完遂例における著効率は、1型で62/54/60/39/39%(RGT)、2型で87/85/82/79/63%と、1型では65歳以上で低率であった。1型65歳以上例における著効は、血小板低値(p=0.027)、治療開始4週時のHCV-RNA減少率(p<0.001)が関与した。治療開始4週時のHCV-RNA減少率:1log未満/1-2/2-3/3-4/4log以上/HCV-RNA陰性の割合は、65歳以上で 12/15/23/28/15/6%、65歳未満で11/14/24/20/22/8%であり、減少率別の著効率は、65歳以上で0/0/27/42/80/100%と、減少率が増加するにつれて著効率が増加し、65歳未満の6/17/54/74/88/100%と比し、HCV-RNA減少が4log以上の症例では遜色ない著効率が得られた。<検討2> 肝発癌は、男性(HR:3.5, p=0.007)、血小板15万未満 (HR:4.7, p=0.007)、AFP5ng/ml以上 (HR:2.8, p=0.036)で有意に高率であり、無効群に比し、著効群(HR:0.27, p=0.016)で有意に発癌率が抑制された。[結論] 高齢者に対するPeg-IFN/RBVによる治療介入により、著効例では肝発癌が有意に抑制されることから、高齢者においても積極的な抗ウイルス療法の導入が望ましく、特に良好な著効率が得られる2型は良い適応である。1型においては、治療開始早期の反応性を念頭においた治療が必要である。 |