抄録 |
【目的】C型慢性肝炎のインターフェロン(IFN)治療応答や持続感染を規定する因子としてIL28Bの遺伝子多型が注目されている。今回われわれは高齢者におけるIL28B遺伝子多型と臨床データを解析し、IL28B遺伝子多型の鉄代謝への影響について検討した。【方法】当科における70歳以上のC型肝炎症例58例を用いてIL28Bの遺伝子多形をrs8099917についてタイピングしGenotypeTTとGenotypeTG/GGの2群に分けて評価した.[評価1] 70歳以上のC型慢性肝炎症例58例から肝発癌に寄与する因子を多変量解析(多重ロジスティク回帰分析)で評価した。[評価2]IL28B遺伝子多型と鉄代謝因子を含む宿主因子の関連性を評価した。【結果】[ 評価1]70歳以上のC型肝炎症例における肝発癌に寄与する要因はフェリチン(OR=0.975, P=0.030),4型コラーゲン7S(OR=4.269, P=0.019)との関連性も示された。70歳以上の高齢者ではIL28B遺伝子多型は発癌に関与しなかった。[評価2]血清Fe値(P<0.01),血清フェリチン値(P<0.05),γ-GTP血清Fe値(P<0.01)値 ,HDLC値(P<0.05)はGenotypeTG/GG群で有意に高値であった。【考案】70歳以上の高齢者において発癌に関連する因子は血清フェリチン値や肝線維化のマーカーである4型コラーゲン7Sであった。また持続感染になりやすくIFNによる治療抵抗性の遺伝子型であるGenotypeTG/GGにおいては血清Fe,フェリチン,γ-GTPレベルは有意に高値であることが判明した。高齢者では発癌リスクを考慮に入れた治療が必要であると考えられるが、IFN少量長期投与による肝線維化抑制や、高齢者のGenotypeTG/GGにおいては除鉄も治療の一つの選択肢となりうると考えられた。【結語】70歳以上の高齢者において肝の線維化,鉄代謝が発癌に影響を及ぼす可能性が示唆された。IL28Bの遺伝子多型も鉄代謝と関与している可能性が示唆された。 |