セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

高齢者のC型肝炎-どう扱うか?

タイトル 肝W2-13:

ALT正常高齢C型肝炎の長期予後の検討

演者 新家 卓郎(大垣市民病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】C型肝炎患者の高齢化は著明で、副作用のある現状の抗ウイルス療法の適応とならない例が増加している。しかもこれらの患者のALTは基準値内であることが多く、経過観察されることが多い。今回われわれは「ALT正常C型肝炎」の長期予後を発癌との関連から検討した。【方法】対象は当院で経験したC型肝炎患者4620例中、3年以上経過観察され、ALTの積分平均値が40IU/L以下、肝発癌が経過観察開始後3年以後であった518例である。これらを70歳以下の若年群(379例)と71歳以上の高齢群(139例)に分けて、発癌に関与する因子を検討した。男性228例、女性290例で、遺伝子型は1が239例、2が129例(不明150例)、経過観察期間は11.3年(3.0~17.2年)であった。検討項目は性別、各種血液性化学値等と発癌の関連である。【成績】1)経過観察中に59例に発癌を認めた。若年者群と高齢者群での5年、10年、15年の発癌率はそれぞれ2.2%と1.5%、8.7%と16.6%、13.9%と25.8%であり高齢者群で有意に高率であった(p=0.0209)。2)高齢者群で発癌に関与する因子はビリルビン高値(1.2mg/dL超、ハザード比4.710 [1.731-12.810])、血小板低値(15万未満、15.736 [4.428-55.918])、ALT高値(20IU/L超、15.182 [1.742-132.330])であった。3)若年者群で発癌に関与する因子は血小板低値(5.466 [2.838-10.527])、γ-GTP高値(56IU/L超、2.511 [1.300-4.850])、ビリルビン高値(2.427 [1.108-5.318])であった。3)発癌時の年齢は若年群で71歳(54~82歳)、高齢群で80歳(77~86歳)であった。【結論】ALT 正常C型肝炎でもビリルビン高値、血小板低値、ALT高値の場合は発癌しやすいことが明らかとなった。高齢であってもP.S.の良い患者は、肝細胞癌の治療適応となると考えられ、今後来るべき副作用の少ない抗ウイルス療法を考慮すべきと考える。
索引用語 C型肝炎, 高齢