セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 肝S3-4:

当院における潜在性肝性脳症の特徴

演者 吉村 映美(長崎大・消化器内科)
共同演者 市川 辰樹(長崎大・消化器内科), 中尾 一彦(長崎大・消化器内科)
抄録 【目的】精神神経機能検査(Neuropsychological Test (NPT))は 肝疾患に伴う潜在性から顕性脳症などの診断補助検査として当科において施行されている。NPTは数字追跡試験(A,B)、図形配置試験、数字符号試験、積木試験、反応時間(A,B,C)の8項目が含まれており、タブレット型コンピューターを用いて検査を行うことで、簡便に施行できる。今回我々は肝疾患患者の潜在性肝性脳症と肝予備能、栄養状態とQuality of life (QOL)について検討した。
【方法】2011年7月から2012年3月まで当科にて肝疾患を診断された50症例を対象とした。平均年例は59.0歳、男性28名、女性22名、病因はHBV14例、HCV20例、その他16例でそのうち生体肝移植後が15例であった。分枝鎖アミノ酸製剤投与例が21例であった。全員にNPTを行い、各年齢の健常値上限の10%cut-off値からはずれた値を異常とした。また、QOLや睡眠状態の評価のために、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、エプワース眠気尺度(ESS)、肝疾患症状評価表(CSS)、SF-36よりなるアンケートを行った。栄養状態は間接カロリメトリを用い、呼吸商(RQ)と安静時エネルギー消費量(REE)の測定を行った。
【成績】NPT8項目のうち、すべて正常であったのは、6例(12.0%)のみであった。異常項目の個数の中央値は2であった。50名をNPTの異常数が2以下の群(28例)と3以上の群(22例)の2群に分割した。両群間を比較すると、NPTの結果が悪い方がプロトロンビン時間が延長しており(P=0.03)、Child-Pughスコアにおいても得点が高かった(P=0.03)。さらに、NPTの異常数との相関関係を調べたところプロトロンビン時間(r=-0.47、P=0.0005)、総蛋白(r=-0.34、P=0.016)、コリンエステラーゼ(r=-0.33、P=0.02)、Child-Pughスコア(r=0.33、P=0.02)において有意な相関を認めた。PSQI、ESS、CSS、SF-36、またRQやREEにおいてNPTの異常数との相関は認めなかった。
【結論】今回の結果では顕性脳症を認めない症例においても、NPTにおいて異常を認めた。不顕性肝性脳症と肝予備能の間に相関を認めた。
索引用語 潜在性肝性脳症, 精神神経機能検査(NPT)