セッション情報 ワークショップ3(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

アレルギー性消化器疾患の実態

タイトル 消W3-1指:

日本における好酸球性食道炎の実態およびその病態

演者 古田 賢司(島根大・2内科)
共同演者 石原 俊治(島根大・2内科), 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 好酸球性食道炎(EE)は、食道の上皮層中に多数の好酸球の浸潤が認められ慢性的に持続するアレルギー疾患である。本疾患では食道扁平上皮の透過性の亢進、増殖促進、粘膜下層の浮腫・線維化が見られ、嚥下障害、胸やけ等の症状の他、食道の狭窄が生じる可能性がある。世界的にも本疾患の報告例が増加傾向にあり現在注目されている。今回、我々は厚生労働科学研究費補助金、難治性疾患克服研究事業にもとづく研究の一部として、2004年から2009年まで全国1078の医療機関の参加のもとEEの疫学実態調査及び病態解明に向けた研究を行った。今回の全国調査の結果、EEは26例の報告があった。男女比は3.3:1、平均年齢は49歳、患者のおよそ半数に気管支喘息などのアレルギー疾患の合併が認められた。症状としては、嚥下困難感の訴えが最も多く、その他、胸やけなどの胃食道逆流症症状もみられた。血液検査ではEE症例の約3割で好酸球の増加が認められた。内視鏡検査では、食道粘膜の縦走する溝状裂孔、白色の点状滲出物の付着、多発する輪状狭窄、局所性の狭窄が認められ、CTでは半数で食道壁の肥厚を認めた。治療では、約3分の2の症例にグルココルチコイドが投与されていた。さらに好酸球性食道炎の病態を明らかとする目的で、食道粘膜に発現する遺伝子の変化について食道粘膜の生検組織が得られた3例を対象にマイクロアレイを用いて解析を行った。その結果、これまでの欧米での検討と同様に、日本人においてもIL-5、IL-13とともに好酸球を食道上皮に浸潤させるEotaxinの遺伝子の発現増強がみられ、さらにfilaggrin、involucrinなどの遺伝子の発現減弱が認められることが明らかとなった。
索引用語 好酸球性食道炎, eotaxin