セッション情報 ワークショップ3(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

アレルギー性消化器疾患の実態

タイトル 消W3-6指:

我が国における炎症性腸疾患とセリアック病の関連について

演者 渡辺 知佳子(防衛医大・2内科)
共同演者 穂苅 量太(防衛医大・2内科), 三浦 総一郎(防衛医大・2内科)
抄録 【目的】セリアック病は、遺伝的要素と麦類蛋白(グルテン)摂取の後天的要素がきっかけとなって発症するグルテン不耐性腸症である。従来は両素因が日本には極めて関係が薄いため、稀な疾患と見過ごされてきたが、最近、国内でセリアック病との関連が疑われる消化管悪性リンパ腫や神経障害患者が散見され、食生活の西洋化に伴い顕在化している可能性が示唆される。しかし我が国では診断のための血清抗体検査が困難で、その検討は進んでいない。また本疾患は、症状が炎症性腸疾患患者と類似しているため、鑑別に血清抗体検査を行うように欧米では推奨されている。そこで、我が国における炎症性腸疾患におけるセリアック病の実態を、欧米の診断アルゴリズムに従って検査を進め調査した。【方法】当科の炎症性腸疾患患者と、コントロールとして大腸ポリープ患者において、血清で抗組織トランスグルタミナーゼ抗体(抗TG抗体)、抗グリアジン抗体(抗DGP抗体)を測定した。陽性患者においては、HLA・十二指腸の組織学的検査を行った。抗体陽性者のうち一部に食事指導を行い、血清抗体・内視鏡組織検査で経過観察した。【成績】炎症性腸疾患患者では、コントロール群に比べ抗TG抗体・抗DGP抗体の陽性率は高かったが、組織学的にセリアック病の活動性の高い患者はみられなかった。炎症性腸疾患患者のうち、疾患活動性が高いと抗体が陽性となる傾向がみられたが、有意ではなかった。一部の抗体陽性患者に食事指導を行ったところ、症状・血清抗体価・組織像の改善がみられた。【結論】日本にはセリアック病患者は存在しないとされていたが、血清抗体陽性者は存在した。血清抗体陽性例は、スクリーニング時点では組織学的には非活動性でも、経過観察中に高率に発症に至ると報告があり、今後のグルテン摂取量(後天的要素)によっては、発症リスクあるいは悪化因子の可能性が考えられるので、注意深く経過を観察する必要が示唆された。
索引用語 炎症性腸疾患, セリアック病