セッション情報 ワークショップ3(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

アレルギー性消化器疾患の実態

タイトル 内W3-8追:

当院で経験したFood protein induced enterocolitis syndrome(FPIES)の6例

演者 川本 愛里(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門)
共同演者 十河 剛(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門), 藤澤 知雄(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門)
抄録 【背景】FPIESは、ミルクまたは母乳を開始後に、血便、嘔吐などの消化器症状が出現する疾患である。特異的IgEを介さない細胞依存性アレルギーが主体とされ、診断に困難を極めることがある。【対象と方法】2007年の開院から5年間で、生後3か月以内に血便・嘔吐などの消化器症状を主体とし、FPIESと診断された6例(男:女=4:2)を対象とした。出生歴、家族のアレルギー歴、栄養法、症状の出現時期、臨床症状、血液検査所見、内視鏡所見、大腸粘膜の組織学的所見、治療法の比較検討を行った。【結果】6例中5例が満期産であり、早産児は1例であった。家族のアレルギー歴がある児は2例であった。母乳2例、母乳と人工乳の混合栄養4例であった。症状出現時期は、生後7日以内で1例、生後1か月未満で3例、生後1か月から3か月以内で2例であった。臨床症状は血便83%(5/6)、下痢67%(4/6)、嘔吐33%(2/6)、体重増加不良17%(1/6 )であった。特異的IgE値が陽性の症例は、ミルクおよび卵白が1例、卵黄および卵白が1例であった。4例で15%以上の好酸球上昇を認めた。CRPが5mg/dl以上に上昇した症例は1例も認めなかった。抗原特異的リンパ球刺激試験(ALST)は、3例で実施され、陽性率は100%であった。便中好酸球は検査した4例全てで陰性であった。腸粘膜組織検査を施行された4例は非特異的な慢性炎症細胞浸潤を認めた。内視鏡を施行した4例では、浮腫状粘膜、出血、潰瘍など様々な所見が得られた。5例は治療用ミルクに変更し、1例は母の牛乳摂取制限をすることで、速やかな症状の改善を認めた。【考察】新生児、乳児期に母乳やミルク開始後に、感染などの誘因なく、血便・嘔吐等の症状がみられた場合は、FPIESを考慮する必要があると考えられた。
索引用語 アレルギー, ミルク