セッション情報 ワークショップ3(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

アレルギー性消化器疾患の実態

タイトル 内W3-10:

移植片対宿主病における消化管内視鏡所見、病理組織学像の検討

演者 高木 智久(京都府立医大大学院・消化器内科学)
共同演者 吉田 直久(京都府立医大大学院・消化器内科学), 内藤 裕二(京都府立医大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】移植片対宿主病(GVHD)は骨髄移植や末梢血幹細胞移植などの造血幹細胞移植治療において重要な合併症の一つである。GVHDは移植片中にドナーT細胞が含まれることによりIV型アレルギーの一つとして発症し、時に消化管障害を来すことが知られている。この消化管病変の内視鏡像は極めて多彩であり、その詳細については不明な点も多い。そこで、本研究では移植後GVHD発症患者と化学療法単独治療後に認められる消化管病変を比較検討し、その内視鏡的特徴について解析を行った。【方法】2004年1月から2011年4月までに当院にて血液疾患のため同種骨髄移植または同種末梢血幹細胞移植が施行され、消化管GVHDの臨床病理学的診断基準を満たした24例(男性8例,女性16例)、ならびに、同時期に化学療法単独で加療され、内視鏡検査が施行された血液疾患患者28例(男性15例,女性13例)を対象として、各消化管の内視鏡像、組織学的所見の比較検討を行った。【結果】上部消化管内視鏡検査は24例に対して施行され、食道ではGVHD群に特徴的内視鏡所見は認められなかった。一方、胃観察所見ではGVHD群において、粗造粘膜(1/24)が認められ、十二指腸観察所見では、びまん性発赤(5/24)、斑状発赤(2/24)、顆粒状粘膜(2/24)、粗造粘膜(2/24)が認められた。下部消化管内視鏡検査は9例に施行され,GVHD群では回腸及び大腸に顆粒状粘膜(2/9)、浮腫状粘膜(3/9)、びまん性発赤(2/9)が認められた。病理組織検査では、GVHD症例において腺管密度の著明な低下、炎症細胞浸潤、間質の繊維化が認められた。また、腸管上皮のアポトーシスについてtunnel法にて定量的に検討したところ、移植後GVHD群で有意に増加していた。【考察】1) 移植後消化管病変の内視鏡像は多彩な変化を示し、2) GVHDに特徴的な内視鏡像は十二指腸、大腸に高頻度に認められた。一方、食道・胃においてはGVHDと診断できる特徴的内視鏡像は認められなかった。3) 消化管GVHDの診断において、上部消化管内視鏡検査による十二指腸観察が有用であるかことが示唆された。
索引用語 移植片対宿主病, 消化管GVHD