セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 肝S3-5:

脳MRIによるミニマル肝性脳症の病態解析

演者 岩佐 元雄(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 杉本 龍亮(三重大大学院・消化器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】ミニマル肝性脳症の病態解明は十分でなく、診断法も確立していない。肝性脳症の成因に高NH3に伴うアストロサイトの機能異常が関与するとした基礎的報告がみられる。顕性脳症のない肝硬変(LC)を対象に、MRI拡散強調係数(ADC)の測定(アストロサイトの腫大や軽微な脳浮腫を反映)およびMRI-voxel based morphometry(VBM)による脳白質の形態解析(アストロサイトの脱落を反映)を施行し、これらのミニマル脳症診断能および機能障害の局在判定能を検討した。【方法】検討1:対象はLC40例(平均66歳、ミニマル脳症10例、脳症なし20例)、健常者24例(平均62歳)であり、MRI拡散強調像を撮影、被殻、淡蒼球、視床、前頭葉白質、頭頂葉白質、帯状回に関心領域を設定、ADCを測定した。さらにこれらの患者を経過観察し、ADC値と顕性脳症出現率、生存率との関係を解析した。検討2:LC18例(平均68歳、NP testによりミニマル脳症2例)、健常者16例(平均69歳)を対象に、T1強調画像を撮像、statistical parametric mapping 8を用いてVBM解析を施行した。【結果】検討1:ミニマル脳症、非脳症間で、NH3を含む臨床検査値、患者背景に差はなかった。前頭葉白質、頭頂葉白質のADC値は、ミニマル脳症群で有意な高値を示した。他の領域では、ADC値とミニマル脳症の間に関連はなかった。経過観察中に10例が顕性脳症を発症し、前頭葉白質、頭頂葉白質のADC高値が有意な顕性脳症発症予測因子であった(p<0.05)。検討2:LC患者は健常者と比較して、帯状回、楔前部、側頭葉、中心前回、後頭葉で有意な容積の減少が認められた(p<0.001)。ミニマル脳症患者でも同じ領域に萎縮がみられ、血中NH3値およびNP test値と白質萎縮の程度との間に相関が認められたことから、肝性脳症との関連が示唆された。【結論】白質ADCはミニマル脳症と密接な関連を示し、脳症顕性化の予測因子でもあった。また、今回同定された白質萎縮領域は、萎縮の程度と血中NH3、NP test値との相関が認められたこと、その機能局在から、肝性脳症との関連が示唆された。
索引用語 ミニマル肝性脳症, MRI