セッション情報 ワークショップ4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

臓器移植法改正後の脳死肝移植を如何に推進すべきか-新たな問題点とその解決

タイトル 肝W4-3:

現行の臓器配分システムの問題点:原発性胆汁性肝硬変患者の待機死亡リスク

演者 玄田 拓哉(順天堂大静岡病院・消化器内科)
共同演者 市田 隆文(順天堂大静岡病院・消化器内科DELIMITER日本脳死肝移植適応評価委員会)
抄録 【目的】脳死肝移植レシピエント登録患者の背景肝疾患が待機死亡に与える影響を検討した。【方法】1997年10月から2011年8月末までに日本脳死肝移植適応評価委員会において評価を受け、臓器移植ネットワークにレシピエント候補として登録された18歳以上の患者の中から劇症肝炎患者と再移植患者を除いた1056例を対象とした。適応評価委員会事務局データベースに登録された臨床情報と、臓器移植ネットワークに記録された2011年9月末時点の転帰を用い、待機死亡に寄与する因子を解析した。背景肝疾患の待機死亡ハザード比はC型肝硬変患者を対照として算出した。【成績】Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、登録時年齢、性別、血液型、背景肝疾患の中で、待機死亡に寄与する有意な要因として年齢とPBC、多発性肝のう胞症が抽出された。PBC患者の待機死亡ハザード比は1.79(95%CI 1.34-2.39、P<0.001)であり、Kaplan-Meier法で算出した全C型肝硬変患者と全PBC患者の待機生存期間には有意差が認められた(中央値631日vs.392日、P=0.001)。両者の患者背景を比較すると、C型肝硬変患者ではCrとPT-INRが高値で、PBC患者はT-bilとMELDスコアが高値であった。CTPスコアに差は認めなかった。CTPスコア、医学的緊急性、MELDスコアで調整したPBC患者の待機死亡に関するハザード比はそれぞれ、2.02、1.62、1.32であり、前二者は統計学的に有意であったがMELDスコアで調整したハザード比は有意ではなかった。MELDスコアを用いて患者を層別化して累積待機生存率を検討した場合も、両者に差は認められなくなった。【結論】PBC患者は他疾患患者と比較して待機死亡リスクが高いことが判明した。CTPスコアあるいは現行の医学的緊急性を用いた予後予測ではPBC患者の待機死亡リスクを臓器配分に反映することは困難で、MELDスコアを用いることで公平な予後予測に基づく適切な臓器配分が可能と考えられた。
索引用語 PBC, MELD