抄録 |
【はじめに】劇症肝炎において血液浄化療法が発達した現在でも経過中における最適な移植の期日を同定することはいまだに困難であり,これは2008年に「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」にて改訂された新劇症肝炎肝移植ガイドラインを発表した後でも解決されていることでは決してない.このスコアリングの本来の意義は脳症発症時の死亡予測割合を明示することであるが,このポイントで表される死亡予測割合は,そのまま脳症発症以前および経過中において重症度予測としても有用であると考えられ,今回新たに鹿児島大学で集積された2004年から2009年までの全国調査を併せて移植に至適な期日を同定するのに参考となるべくスコアリングの点数の推移を検討した.【方法と成績】対象は2004年から2009年まで鹿児島大学にて全国調査にて集積された症例劇症肝炎488症例(平均年齢51.4歳,男性:女性 236:252,FHA:FHS:LOHF 227:233:28,病因 HBV194例,HAV14例,その他ウイルス13例,AIH47例,薬物性72例,不明およびその他148例,内科生存135例,内科死亡240例,肝移植生存91例,肝移植死亡22例)である.まず脳症発症時のスコアリングの有用性について検討すると,内科生存例3.3点,内科死亡例4.9点,移植生存5.2点,移植死亡6.3点であった.内科治療で解析可能な277例での検討では,5点以上を死亡と判定すると,陽性適中度(PPV)は0.83,正診率は68.5%であった.次いで,スコアリングを経過として治療開始5日間まで検討すると,劇症肝炎診断時より内科死亡例の多くの症例が5点を下回るほど回復することはなく,また内科生存,移植生存も多くの症例は5点を上回ること無く経過し,5日目までの経過でいずれの群もポイントは改善傾向が認められた.逆に移植にて救命できなかった症例は,移植前のスコアでも変化なく,むしろ増加していく傾向が認められた.【考察】治療早期のスコアの推移は予後を示唆していると考えられた. |