セッション情報 |
ワークショップ4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
臓器移植法改正後の脳死肝移植を如何に推進すべきか-新たな問題点とその解決
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タイトル |
W4-基調講演1:脳死肝移植に至らなかった提供事例と問題点
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演者 |
嶋村 剛(北海道大病院・臓器移植医療部) |
共同演者 |
鈴木 友己(北海道大病院・臓器移植医療部), 藤堂 省(北海道大大学院・移植外科学) |
抄録 |
【背景】1997年の臓器移植法施行後、2012年2月までに167例の脳死下臓器提供が行われた。これらのうち、2010年7月の法改正後の提供が約半数の81例となっている(法改正により年平均6.7例が51例に増加)。これにより脳死肝移植は現実的な治療選択肢となったが、その推進には多くの解決すべき点が残されている。【目的】摘出手術後に移植を断念した事例の検討から、今後の問題点について考察する。【対象】2001年2月から2012年2月までに当科で経験した脳死ドナー31例。【結果】脳死ドナー31例中21例で脳死肝移植を実施し、16例が生存中である(死亡例にprimary non-function graftは認めず)。脳死肝移植を断念した10例の理由は、肉眼及び病理学的脂肪肝(5例)、種々の程度の組織学的肝障害(5例)であったが、同時にBMI>35(1例)、160mEq/L以上の高ナトリウム血症(4例)、DOA>10γ(5例)を認めた(重複あり)。脳死肝移植実施の有無によるドナー年齢、原疾患、心停止の有無、ICU入室期間に差は無かった。【結語】移植実施の最終的な判断は移植担当医に委ねられている。ネットワークからドナー適応基準は提示されているが、全身状態や組織像の厳密な判断基準は示されていない。脂肪肝や肝炎(F: Fibrosis、A: Activity)に対するドナー適応基準をはじめ、ドナーの全身ならびに提供された腹部臓器の状態を的確に評価・管理するコンサルタントシステム、さらには提供された全症例に対する移植実施施設による検証が必要である。これらはまた脳死肝移植推進に必須の透明性の担保にもつながる。 |
索引用語 |
脳死肝移植, 脳死ドナー |