セッション情報 |
シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)
ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療
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タイトル |
肝S3-6:消化管循環動態からみたミニマル肝性脳症の病態
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演者 |
関本 匡(千葉大・消化器内科) |
共同演者 |
丸山 紀史(千葉大・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】肝硬変では、消化管領域の循環異常を伴うことが知られている。特に下部消化管はアンモニア(NH3)の主たる合成の場であり、その血行異常が脳症の発現に関与していることが推測される。我々は肝硬変例において、微小気泡の動態からみた消化管循環を超音波により定量的に検討した。本成績と神経機能検査結果との関連を分析し、消化管循環異常の観点からミニマル肝性脳症(MHE)の病態を明らかにした。【方法】対象は、顕性脳症例を除く79例(肝硬変53、健常例26)である。まず超音波にて上腸間膜動静脈(SMA、SMV)を同一断面で描出し、消化管循環時間(SMAとSMVでのソナゾイド®造影発現時間差、秒)を計測した。同検査を、空腹時と食餌負荷30分後(エレンタール® 80g)に施行し、食餌反応度(空腹時と食餌負荷後の消化管循環時間比)を算出した。また神経機能検査としてNumber connection test (NCT-A/-B、秒)を行い、コントロール50例でのNCTの成績を基準として、+2SD以上をMHE群とした。本研究は、IRBで承認された前向き臨床研究である。【成績】1.肝硬変における消化管循環:消化管循環時間は、健常例(10.4±3.4)に比べ肝硬変(13.9±3.6、p=0.0003)で延長していた。また食餌反応度は健常例(0.72±0.11)に比べ、肝硬変(0.93±0.16、p=0.0361)で有意に高く、反応性の減弱があるものと考えられた。さらにChild B、C群において、消化管循環時間は低NH3群(<70、12.0±1.9)に比べ高NH3群(≧70、16.1±3.6、p=0.0259)で延長していた。2.MHEと消化管循環との関連:NCT-A/-B(同年齢分布)は、健常例(32±14/78±34)に比べ肝硬変(60±25/129±67、p<0.0001)において高値で、食餌反応度と正の相関を示した(NCT-A:r=0.618、p=0.007、NCT-B:r=0.597、p=0.0088)。また食餌反応度は、非MHE群(0.84±0.09)に比べMHE群(1.08±0.05、p=0.048)で有意に減弱していた。【結論】肝硬変例では消化管での血流鬱滞ならびに食餌摂取に対する弱反応性が存在し、高NH3血症やMHEの発現と関連していた。消化管血流に対する治療介入は、新たなMHE治療の可能性を有する。 |
索引用語 |
肝硬変, 肝性脳症 |