セッション情報 ワークショップ4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

臓器移植法改正後の脳死肝移植を如何に推進すべきか-新たな問題点とその解決

タイトル 外W4-6:

脳死肝移植におけるsplit liver transplantation症例の検討

演者 伊藤 孝司(京都大・肝胆膵・移植外科)
共同演者 海道 利実(京都大・肝胆膵・移植外科), 上本 伸二(京都大・肝胆膵・移植外科)
抄録 【目的】改正臓器移植法が2010年7月より施行され、我が国における脳死肝移植数は約10倍に増加したが、未だ脳死登録してもドナー出現が無く、死亡する症例が多いのも現状である。Split liver transplantation(分割肝移植)はドナー不足を補う手法として広く欧米諸国で行われており、当科でも積極的に行ってきた。今回、当科における全肝移植症例と分割肝移植症例についてその成績を比較検討した。【方法】対象は、1999年6月から2011年12月までに施行した脳死肝移植31症例。内訳は全肝移植19例、分割肝移植(split あるいは reduced)12例。当科では、レシピエントの術前状態、ドナー体重/レシピエント体重比1.5倍以上であれば分割肝移植を考慮することとしている。全肝症例と分割肝症例につき、年齢、グラフト体重比(GRWR)、冷阻血時間、成績等を比較検討した。連続変数は中央値で示し、2群比較はMann-Whitney U検定で、生存率はlog-rank検定で比較した。【結果】年齢は、全肝移植36 歳(13-69、小児4例)、分割肝移植24歳(2-52、小児5例)であった。分割肝移植時における登録候補順位は、第1位8名、第2位2名、第3位1名、第4位1名であり、グラフトの内訳は左葉系6例、右葉系4例、外側区域2例であった。 GRWRは、全肝移植2.26%(1.55-4.18)、分割肝移植1.61%(0.98-3.27)であった。冷阻血時間は、全肝移植510分(320-608)、分割肝移植565分(457-731)と有意差を認めず。5年生存率は、全症例74%、全肝移植70%、分割肝移植83%と有意差を認めず。成人症例においても、全症例64%、全肝移植66%、分割肝移植71%と有意差を認めなかった。また全例グラフト不全は認めなかった。【結語】分割肝移植の移植成績は良好であり、生体肝移植の経験が豊富な本邦において、ドナー不足を解決する有用な方法である。しかし、ドナー肝臓重量のより正確な推定法、第1候補レシピエントに不利益を生じない配慮、第2候補選択システム、バックテーブルでの分割手技の改良などが必要である。
索引用語 脳死肝移植, split liver transplantation