セッション情報 ワークショップ4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

臓器移植法改正後の脳死肝移植を如何に推進すべきか-新たな問題点とその解決

タイトル 外W4-7:

マイアミ大学における高齢ドナーを用いた脳死肝移植成績の検討

演者 牧 章(山梨大・1外科DELIMITERMiami Transplant Institute, University of Miami)
共同演者 西田 聖剛(Miami Transplant Institute, University of Miami), A. G.  Tzakis(Miami Transplant Institute, University of Miami)
抄録 【目的】近年、米国では、ドナー不足を改善するために、高齢者や脂肪肝、心停止後ドナー等のExpanded criteria donorを用いた肝移植が積極的に行われるようになってきた。しかし、2004年を境に、高齢ドナーからの臓器摘出は減少している。そこで、高齢ドナー肝を用いた肝移植成績を検討し、グラフトの予後規定因子について考察した。【方法】マイアミ大学にて2002年から2006年に 施行された脳死初回肝移植症例のうち、Status 1症例を除いた463症例をretrospectiveに検討した。グラフトロスはレシピエントの死亡もしくは再移植の時点と定義した。尚、マイアミ大学では、ドナー年令の上限は設けず、Macro steatosisは30%以下を目安とし、冷温阻血時間は8時間以内を目標としている。【成績】全463例中、65歳以上の高齢者ドナーを用いた肝移植症例は44例(高齢群)、65歳未満のドナーからの移植例は 419例(対照群)であった。両群間のレシピエントの患者背景に差は認めなかったが、グラフトの冷温虚血時間中央値は高齢群で6.4時間、 対照群で8.3時間と高齢群で有意に短かった。移植後6週以内の早期グラフトロスは高齢群で4例(9%)、対照群で20例(4%)と有意差は認めなかった。5年累積グラフト生存率では高齢群で64%、対照群で74%で有意差は認めなかった。ドナー年令、レシピエントのMELDスコア、HCVの有無、冷温虚血時間を用いた多変量解析では、MELD>23点とHCV感染がグラフト長期予後の規定因子であったが、冷温虚血時間と高齢ドナーは短期・長期予後ともに予後規定因子ではなかった。【結論】冷温虚血時間とドナー年令はグラフト生存の予後規定因子とされているが、本解析では、高齢ドナーは、グラフトの短期・長期予後ともに非高齢ドナーと同等の成績であった。高齢ドナー群の成績を維持するためには、綿密なグラフトの評価と虚血時間の短縮が肝要と考えられる。
索引用語 脳死肝移植, 脳死ドナー