セッション情報 |
ワークショップ4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
臓器移植法改正後の脳死肝移植を如何に推進すべきか-新たな問題点とその解決
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タイトル |
肝W4-8:来るべき高齢化社会における肝移植にいかに対応するか?-当院の肝硬変患者に対する肝移植成績からの推測
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演者 |
石上 雅敏(名古屋大・消化器内科) |
共同演者 |
木内 哲也(名古屋大・移植・内分泌外科), 後藤 秀実(名古屋大・消化器内科) |
抄録 |
【背景】今後我が国では高齢化社会を迎えることになり、肝硬変患者にも高齢者が増加することが予想される。2010年7月の改正臓器移植法の施行から2012年3月までで脳死下肝臓提供が69例(平均月3.45例)と飛躍的な伸びを見せているがまだまだ十分ではなく、貴重なグラフトの有効な分配法に対する考察として当院での肝硬変患者における成人間肝移植成績を検討、特に年齢につき焦点を当て検討した。【患者および背景】当院において2003年より2011年までに行った肝硬変患者における肝移植症例84例(うち脳死肝移植10例)の予後について検討した。術前因子としてドナー、レシピエント性別、年齢、原疾患、肝癌の有無、脳死、生体移植の別、MELD score、血清クレアチニン、総コレステロール値、中性脂肪値、空腹時血糖値、HbA1cについて比例ハザードモデルを使って検討した。また因子別の予後の比較にはLog-rank testを使用した。p<0.05を統計学的有意差とした。【結果】多変量解析にて肝移植後死亡のリスクとしてレシピエント年齢(HR:1.100;95%CI:1.010-1.199,p=0.029)および術前空腹時血糖値(HR:1.008;95%CI:1.001-1.015,p=0.028)が有意な独立因子として選択された。55歳以下では1年:92.5%、5年:92.5%、56歳以上では1年:75.9%、5年:65.3%(p<0.001)、空腹時血糖値:110mg/dl未満では1年:92.7%、5年:90.7%、110mg/dl以上で1年:75.9%、5年:66.4%(p=0.023)の生存率であった。上記HRから55歳以下の症例が1年以内の死亡率が7.5%、60歳で12.1%、65歳で19.5%、70歳で31.3%の理論値となる。また空腹時血糖値を加えて検討すると50%以上の死亡リスクが見込まれる血糖値が55歳以下:348、60歳:288、65歳:228、70歳:169(各々mg/dl)となった。【結語】当院での肝硬変患者における肝移植成績からはレシピエント年齢、空腹時血糖値が重要な因子であることが示され、特に65歳以上の高齢者の場合は空腹時血糖値等も参考にして適応を厳格にすべきであると考えられた。 |
索引用語 |
肝移植, 高齢者 |