セッション情報 ワークショップ5(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸内視鏡およびCT-colonographyによる大腸がん検診の今後の展開

タイトル 検W5-3指:

大腸内視鏡検査による大腸がん検診一次スクリーニング

演者 鈴木 康元(松島クリニック)
共同演者 渡辺 豊(松島クリニック), 西野 晴夫(松島クリニック)
抄録 大腸癌を早期に発見し適切な治療を行うことで大腸癌による死亡を減少させるというのが大腸がん検診の真の目的であり,単に大腸癌を沢山見つけることが大腸がん検診の目的ではない.一般的に大腸がん検診においては便潜血検査で一次スクリーニングが行われ陽性者のみに精密検査としての大腸内視鏡検査が行われるが,人間ドックなどでは大腸内視鏡検査で一次スクリーニングが行われるようになってきている.大腸内視鏡検査には高い感度と特異度があるため,この大腸内視鏡検査で一次スクリーニングが行うという傾向は今後も増えていくと思われる.ただ,大腸内視鏡検査には,(1)費用が高価(2万円から4万円),(2)処理能力が不足(大腸がん検診の対象となる45歳以上75歳未満の人口は5829万人),(3)無視できない不利益が存在(合併症発生率0.078%,死亡率0.00082%)などのデメリットがあるため,大腸内視鏡検査で一次スクリーニングを行う場合はその実施間隔が問題となる.大腸内視鏡検査による一次スクリーニングを実施した集団からの大腸癌による死亡をゼロにすることを目的に大腸内視鏡検査を漫然と逐年実施していくと,大腸内視鏡検査によるデメリットがメリットを上回ってしまうことが危惧される.以前に我々が行った検討では,初回の大腸内視鏡検査で腫瘍性異常が認められなかった場合の2回目の大腸内視鏡検査を行う時期を,年齢が40歳未満で再検査の必要なし,40歳以上65歳未満で4年後,65歳以上で2年後に実施するのが効率的であると結論づけた.検査費用が全額自己負担で,検査に伴う不利益についても充分なインフォームドコンセントがなされている人間ドックにおいては効率的な実施間隔というような概念は必要ないともいえるが,やはり5年も10年も毎年大腸内視鏡検査を実施していくという現在のシステムは改善すべきであると考える.今後は大腸内視鏡検査と便潜血検査,そしてCTコロノグラフィーやカプセル内視鏡といった新しい検査法をも含めた総合的な大腸がん検診実施プログラムの検討が必要と考える.
索引用語 大腸内視鏡検査, 大腸がん検診