セッション情報 | シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療 |
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タイトル | 肝S3-7:肝硬変患者の精神神経機能に対する脂質プロファイルの意義 |
演者 | 谷口 英太郎(久留米大・消化器内科) |
共同演者 | 川口 巧(久留米大・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科) |
抄録 | 【目的】 一部の肝硬変患者には、明らかな精神神経症状はなくとも、定量的神経機能検査で異常を示し、精神神経機能低下(潜在性肝性脳症)を有していることが知られている。近年、このような精神神経機能低下は交通事故や転倒などとの関連が示唆され、社会的問題となってきている。しかし、精神神経機能低下に関与する因子は未だ不明である。そこで、本研究では、精神神経機能低下と関連する因子を模索した。 【方法】 顕性肝性脳症の既往を有しない肝硬変患者で、Neuro-Psychological Tests (NPT)を施行した27名を対象とした(男性15名、女性12名、平均年齢61.2歳)。NPTではナンバーコネクションテスト、デジットシンボルテスト、ブロックデザインテストを施行した。各テストの基準値に対し75 percentileを超えるものを異常と判定し、2つ以上のテストで異常を示した患者を精神神経機能低下と判断した(低下:A-NPT群14名、正常:N-NPT群13名)。精神神経機能と肝予備能や肝代謝能との関連についてデータマイニングを含めた多変量解析で検討した。 【成績】 患者背景では、A-NPT群とN-NPT群で肝予備能に有意差は認められなかった。ロジスティクス回帰解析では、総ビリルビン(P<0.05:OR 0.002)、中性脂肪(P<0.05:OR 0.8886)、遊離脂肪酸(P<0.05:OR 1.0147)が有意な因子として選択され、総コレステロールには傾向差が認められた(P<0.10:OR 1.1189)。一方で、アンモニアや分岐鎖アミノ酸/チロシン比には有意な因子としては認められなかった。決定木解析では精神神経機能低下に関与する因子として遊離脂肪酸が最初の分岐因子となり、遊離脂肪酸が高い患者ではA-NPT群の割合が高かった(遊離脂肪酸≧512μEq/L:75.2%、遊離脂肪酸<512μEq/L:38.9%)。 【結論】 顕性肝性脳症の既往を有しない肝硬変患者では、蛋白質・アミノ酸プロファイルよりも、むしろ脂質プロファイルが精神神経機能低下に関与する可能性が示唆された。 |
索引用語 | 肝性脳症, 脂肪 |