セッション情報 | ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用- |
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タイトル | 消W6-4:慢性セルレイン膵炎病態形成における急性期マクロファージと慢性期マクロファージの経時的連携関連 |
演者 | 佐伯 恵太(慶應義塾大・消化器内科) |
共同演者 | 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科) |
抄録 | 【目的】我々は膵臓炎症における免疫学的機序に注目し、マウス急性膵炎(AP)におけるCD11b+CD11c-Gr-1lowマクロファージ(Mac)のCCL2/CCR2依存的な浸潤とSOCS3依存的な活性化が病態形成に重要であること、同時にこのMacはMyD88依存的な膵炎抑制機構をも持っていることを明らかにしてきた。慢性膵炎(CP)は繰り返す急性炎症により膵腺房の脱落と線維化、および膵性糖尿病を来す疾患であるが、その免疫学的機序は不明である。今回、長期セルレイン反復投与によるマウスCPモデルを用いて、CPにおける炎症性Macの病態形成への関与を検討した。 【方法】C57BL/6 (WT) マウスにセルレイン50μg/kgを1時間毎に1日6回、週2回で10週間連続投与し、CPを誘導した。最終投与より4日後に腹腔内糖負荷試験および血中アミラーゼ、インスリン濃度、膵組織を評価し、免疫担当細胞をFACSで検討した。またCCL2欠損マウス、CCR2欠損マウス、Mac特異的SOCS3欠損マウスに同様にCPを誘導し、比較検討した。 【成績】APモデルとは異なり、驚くべきことにCPモデルではCCL2欠損マウス、CCR2欠損マウスは対照WTマウス群と比較して膵炎は増悪し、膵内外分泌機能の有意な低下が認められ、CD11b+CD11c+Gr-1-MacおよびCD4+T細胞の有意な増加が認められた。急性期膵臓に浸潤するCD11b+CD11c-Gr-1lowMacの数的減少による膵炎抑制機構の破綻の結果これらの慢性炎症細胞が浸潤すると仮説し、低活性型Macへの質的変化により抑制機構を保持したままAPが軽減するMac特異的SOCS3欠損マウスを用いて検討した。結果、Mac特異的SOCS3欠損マウスCPモデルではCD11b+CD11c+Gr-1- Macの有意な減少および膵内分泌機能の改善を認めた。 【結論】慢性膵炎においてCD11b+CD11c+Gr-1-Macは病態形成に重要であるが、急性早期に浸潤するCD11b+CD11c-Gr-1lowMacによりCD11b+CD11c+Gr-1-Macの浸潤は抑制される。以上のことから急性期に出現する炎症性Macの阻害治療介入は慢性期の膵機能障害まで見越した新規治療法となる可能性が示唆された。 |
索引用語 | 慢性膵炎, マクロファージ |