抄録 |
【目的】今回我々は、膵疾患を有する糖尿病(膵性糖尿病)例を対象として、膵外分泌機能と内因性insulin分泌能の関連、および治療に関して検討した。【方法】膵切除後または慢性膵炎を有する糖尿病の入院患者17例[男性11例, 女性6例, 62.1±13.9歳, 慢性膵炎9例, 膵癌術後6例, 膵管内乳頭粘液性腫瘍術後2例]を対象として、benzoyl-L-tyrosyl-[l-13C]alanine (13C-BTA)呼気試験および尿中Cペプチドの測定を行った。13C-BTA呼気試験でΔ13CO2ピーク値(Cmax)が健常者のmean-2.5SD(31.2‰)以下の場合を膵外分泌機能不全(以下,膵不全)と診断し、対象を膵不全の有無で2群に分類し、内因性insulin分泌能、栄養状態の変化、治療内容を比較検討した。【成績】13C-BTA呼気試験でCmaxが低下し膵不全と診断されたのは17例中7例であった。尿中Cペプチドは膵不全例で13.0±8.24 µg/day、膵不全の無い例で35.3±26.1 µg/day, と、膵不全例で有意に低下し、退院時のinsulin投与量も膵不全例で有意に多かった(それぞれ24.9±13.0単位/day, 7.7±10.2単位/day)。膵消化酵素薬(ベリチーム®)は膵不全の全例および不全の無い10例中5例に使用され、平均投与量は8.0±1.5g/dayおよび3.0±3.3g/dayと膵不全例で有意に多かった。入院中の食事摂取量は標準体重当たり、膵不全例で29.3±3.83kcal/day, 不全の無い例で30.3±1.68kcal/dayと明らかな差は無く、栄養指標である血清アルブミン濃度の平均(入院時→退院時)は、膵不全例で3.57→3.83g/dl, 膵不全の無い例で3.91→4.00g/dlと改善、特に膵不全例では有意な上昇を認めた。【結論】膵性糖尿病例において、膵外分泌機能不全を有する方が、内因性insulin分泌能が低下し、治療に多くのinsulin投与量を必要とした。また標準体重当たり30kcal程度の食事および適切なinsulin治療,膵消化酵素薬を用いた治療を行うことで、栄養状態の改善が認められた。 |