セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 消S3-8:

潜在性肝性脳症患者に対する栄養治療介入の効果

演者 佐原 圭(岩手医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 加藤 章信(岩手医大・消化器・肝臓内科DELIMITER盛岡市立病院), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】 肝硬変,慢性肝不全をともなう潜在性肝性脳症患者minimal hepatic encephalopathy(MHE)において神経機能異常の認知(自覚)のない自動車運転能力の低下や欠如の様な出来事は重要な問題である.また,MHE患者の多くは顕性肝性脳症の発症に至る事も多いことから積極的な治療介入の必要性がある. しかしながら,未だMHE患者に対する栄養療法による治療介入についての報告は少ない.今回,我々はMHE患者に対する栄養治療介入の効果を明らかにする目的で検討した. 【方法】ウイルス性肝硬変患者において神経学的検査の上異常を認めるものを対象とした.対象患者に定期的に管理栄養士による栄養指導を行った.栄養指導については患者の身長から算出した標準体重に対し総カロリー30-35 kcal/kg/日,蛋白1.0-1.5 g/日とした.primary endpointをMHEからの神経機能異常の改善として,secondary endpointを患者のQOLの改善とした. 【成績】MHEから神経機能異常を認めない状態への改善は栄養介入後4週間で19人中11人,8週間後で19人中13人(68.4%, p<0.001)認めた.精神機能スコア(SF-8)では8週間後で改善を認めていた(p=0.0413).開始から8週目を比較すると改善群で血清アルブミン値で0.15±0.16 g/dL上昇,MHE群で0.28±0.33 g/dL低下しており有意差を認めた.(p=0.0130).【結論】MHE患者に対する積極的な栄養治療介入によりMHEおよびQOLの改善が認められた.このことから患者の栄養状態の改善はMHEの改善を図る一つの方法と考えられた.
索引用語 潜在性肝性脳症, 栄養治療