セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 吸W6-7:

膵切除術後糖尿病患者の食事摂取量および栄養指標の変化に関する検討

演者 田中 光(弘前市立病院・内科)
共同演者 丹藤 雄介(弘前大大学院・内分泌代謝内科学), 中村 光男(弘前大・保健学科病因・病態検査学)
抄録 【目的】 膵切除術後には糖尿病の合併および膵外分泌能の低下による消化吸収不良を認めることもある。これら膵切除術後の合併症は、インスリン療法および膵酵素薬大量補充療法でコントロールできることが知られている。一方、膵切除術症例には術前から糖尿病を有する例も多く存在する。今回われわれは、膵切除術が糖尿病患者に及ぼす影響に関して、術前後の比較検討を行った。【方法】対象は、術前から糖尿病を罹患し(平均糖尿病罹病期間3.7±3.4年)インスリン療法を施行されており、経口のみで栄養摂取しており、膵切除術前および術後一年以内に糖尿病コントロールのため入院加療を施行された10例(男性6例、女性4例、手術時平均年齢64.4±6.0歳、膵癌6例、胆管癌4例)である。対象の、術前および術後の栄養状態、糖尿病コントロール、食事摂取量、膵内分泌能の比較検討を行った。 【成績】体重は、術前55.2±3.9kgであるのに対し、術後50.1±3.6kgと減少を認めた。血清アルブミンは、術前3.79±0.27g/dlであるのに対し、術後3.55±0.24g/dlと低下を認め、血色素量および血清総コレステロールも低下を認めた。糖尿病コントロールの指標であるHbA1cは、術前8.32±1.39%に対し、術後7.36±1.95%と改善していた。食事摂取量に関しては、総エネルギーは、術前1800.9±272.4kcal/日であるのに対し、術後1566.4±195.4kcal/日と低下し、三大栄養素の摂取量も低下を認めた。尿中C-ペプチドは、術前40.5±8.5μg/日であるのに対し、術後23.1±4.9μg /日と低下を認めた。【結論】糖尿病患者においても、膵切除術後は食事摂取状況および栄養指標の悪化を認め、糖尿病コントロールにも影響する。膵切除術後の糖尿病患者では、血糖コントロールの改善だけにとらわれず、食事摂取量や他の栄養指標が低下していないか注意しなければならない。
索引用語 膵切除術, 糖尿病