セッション情報 |
ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-
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タイトル |
消W6-8:13C長鎖脂肪酸呼気試験による小腸吸収能評価からみた胆管閉塞に対する胆管ステント留置の意義
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演者 |
瀧井 道明(大阪医大・2内科) |
共同演者 |
増田 大介(大阪医大・2内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科) |
抄録 |
【目的】食物由来の中性脂肪はリパーゼにより長鎖脂肪酸に分解されて、腸管内胆汁酸と混合ミセル体を形成して小腸上皮細胞から吸収される。脂肪酸吸収における腸管内胆汁酸の存在意義については明らかではなかった。胆管ステント留置の適応となる悪性胆道閉塞患者の協力を得て、長鎖脂肪酸の小腸での吸収能を13C呼気試験によりステント留置前後で比較することを目的とした。【方法】13C標識長鎖脂肪酸呼気試験は13C palmitic acid 10mg/kgを経口投与して1時間毎に8時間後まで呼気を採取した。赤外分光計を用いて呼気中Δ13CO2を測定して、経時時変化の曲線を描画した。まず、健常者6名を対象に同呼気試験を施行した。次に、閉塞性黄疸で発症した膵頭部癌患者で、ENBDによりビリルビン値3.0mg/dl以下に減黄されて肝機能がほぼ正常化しても根治的切除術などの適応がなく、内視鏡的胆管ステント留置予定の患者5名を対象とした。そして、1)胆管ステント留置直前、2)ステント留置安定化後に同呼気試験を施行した。【成績】健常者では240分後にCmax 5.83±1.08‰をピークとして480分後には4.50±0.97‰に漸減する曲線が得られた(AUC;1741.8±444.3‰・min)。一方、患者群では、1)胆管閉塞状態では480分後にCmax 0.88±0.55‰とほぼ平坦に近い曲線(AUC;129.6±123.0‰・min)であり、吸収は極めて不良であった。しかし、2)ステント留置後は360分後にCmax 7.05±5.49‰をピークとして480分後に5.83±5.01‰に漸減する曲線が得られ(AUC;2320.5±1554.7‰・min)、健常者と同等まで回復がみられた。【結論】胆管閉塞により小腸に胆汁の欠乏した状態では、長鎖脂肪酸の吸収は極めて不良であることが明らかになった。そして、胆管ステント留置は小腸での胆汁酸によるミセル形成を復活させて、長鎖脂肪酸の吸収能を正常化する意義があるものと立証された。 |
索引用語 |
脂肪酸吸収能, 胆汁酸 |