セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 消W6-10:

肝疾患治療における非タンパク呼吸商(npRQ)測定の重要性

演者 兼藤 努(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 須田 剛士(新潟大大学院・消化器内科学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】肝疾患治療に際してnpRQを測定することの有用性を明らかとする。【方法】HCC治療のため入院した59症例を対象とし、入院日翌朝(D1:自宅を反映)と入院4日後(D4:入院を反映)にnpRQなどの栄養指標を測定した。HCCに対する治療侵襲度は、プロトロンビン時間(PT%)の入院時に対する治療後減少率で、治療後快復速度は、治療後のPT%最低日から退院までの日数を治療侵襲度で序した値により検討した。臨床病理学的指標に関するノンパラメトリック解析の結果に加え、重症肝障害に対するnpRQを指標とした栄養介入の実例を供覧する。【成績】D1とD4で基礎エネルギー消費量(BEE)と安静時エネルギー消費量(REE)の測定が可能だった43例中20例において、BEEとREE間に10%以上の差異が認められた。また、入院中の摂取エネルギー(1836 kcal/日:メディアン)は自宅摂取エネルギー(1882 kcal/日)に比し低値で、かつ窒素バランスはD1(-1.85 g/day)とD4(-2.94 g/day)のいずれにおいても負であったにもかかわらず、npRQはD1の0.82からD4の0.86へと有意に改善した(p<0.0001)。コンピューターを用いた精神神経機能検査により、48例中6例にミニマル肝性脳症(MHE)が疑われ、npRQはMHE陽性例において低値である傾向を示した(p=0.07)。またMHE陽性例ではMHE陰性例に比しREEに対する脂肪摂取量が有意に少なかった(p=0.006)。npRQは脂肪摂取比率と有意な正の相関を(p=0.04、r=0.30)、入院後のnpRQ変化は自宅と病院とでの脂肪摂取量の差異と正の相関傾向を示した(p=0.09、r=0.27)。さらに治療後快復速度は、入院後のnpRQ変化量と有意な負の相関を示した(p=0.01、r=-0.64)。【結論】HCC症例において、BEEやREEから必要エネルギー量を正確に算出することは困難であり、npRQでエネルギー出納を確認することが重要である。npRQの低下はMHEの発症やHCC治療からの快復遅延と関連しており、npRQの上昇を図ることがHCC症例の予後改善に寄与するものと期待され、栄養介入における脂質摂取量の重要性が示唆された。
索引用語 非タンパク呼吸商, 治療後快復速度