セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 肝W6-12:

消化器疾患患者における血中3-ハイドロキシイソ酪酸濃度の比較

演者 宮崎 照雄(東京医大茨城医療センター・共同研究センター)
共同演者 本多 彰(東京医大茨城医療センター・共同研究センターDELIMITER東京医大茨城医療センター・消化器内科), 松崎 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 【背景】消化器疾患患者において,代謝・消化・吸収能低下あるいは栄養過多状態により,栄養代謝異常が生じる。多くの消化器疾患では,糖・脂質代謝異常が見られるため,エネルギー供給源としてアミノ酸の重要性が高い。主に骨格筋で異化される分岐鎖アミノ酸(BCAA)は,アセチルCoAやスクニシルCoAに代謝されるため,栄養不良時では,エネルギー産生に重要な栄養素となる。その異化過程において,バリンのみは,一旦,CoA体が外れた3-ハイドロキシイソ酪酸(3-HIB)となり,血液中で同定できるため,骨格筋におけるアミノ酸異化状態を反映する指標となりえる。そこで今研究では,バリン中間異化物質である3-HIBを血液中で測定することで,各種消化器疾患別のBCAA異化状態のプロファイリングを試み,今後の病態栄養別治療応用への有用性について検討した。【方法】健常人48名と,東京医科大学茨城医療センターに来院・入院患者のうち,クローン病患者22名,HCV患者55名,IFN治療中HCV患者55名,肝硬変患者32名,NASH患者14名,ASH患者11名,PBC患者8名,潰瘍性大腸炎患者10名より採取した血清5μLを用いて,高感度LC-MS/MS装置にて,3-HIBを定量した。【結果】血清中3-HIB濃度の平均値は,健常人12.6μMに対し,肝硬変患者で27.7μMと有意な高値を示し,他の消化器疾患中,最も高かった。また,NASHと潰瘍性大腸炎患者では軽度上昇が見られたが,他の疾患では健常人と差はなかった。肝硬変患者における3-HIB値は,血清アルブミン値や総ビリルビン値との相関はみられず,病態進行度との関係は認められなかった。【結論】各消化器疾患と比較し,肝硬変患者で有意な血中3-HIB濃度の増加がみられた。血中3-HIB濃度の測定は,肝硬変患者のエネルギー供給源に対するアミノ酸代謝依存度をリアルタイムに評価し,個人に合った栄養治療に有効なツールになることが期待される。
索引用語 分岐鎖アミノ酸, 3-ハイドロキシイソ酪酸