セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 肝S3-9追:

ミニマル肝性脳症に対する抑肝散の効果

演者 佐藤 秀一(島根大附属病院・肝臓内科)
共同演者 飛田 博史(島根大附属病院・肝臓内科), 木下 芳一(島根大附属病院・消化器内科)
抄録 【背景】肝性脳症には量的精神神経機能検査(neuropsychological tests、以下NPT)によりはじめて指摘されるミニマル脳症がある。ミニマル肝性脳症は臨床的に動作緩慢や注意力の低下が指摘され、この病態が睡眠障害につながったり、自動車運転事故の原因となったりする可能性もあり、この病態を改善する治療が必要である。近年、抑肝散がアルツハイマー型認知症の周辺症状を改善するという報告がみられ、その際の抑肝散の作用機序から潜在性肝性脳症の症状にも有用である可能性がある。今回われわれは、肝硬変症例で血清アンモニア値が異常値を呈した患者さんに、抑肝散を4週間投与して、症状改善がみられるか否かを検討した。【対象と方法】対象は2010年4月~2011年5月までに当科にて肝硬変と診断され、肝細胞癌はコントロールされている症例で血清アンモニア値が80μg/dL以上を呈した患者12例とした。投与前にBTRを含む肝機能検査を行った後、NPT(soft ware ver1.0.0)を行った。同日抑肝散7.5g/日、分3を28日分処方し、次回受診時まで睡眠の程度を4段階に分けて日誌を記載させた。次回受診時、NPTを施行し、治療前と比較検討した。検討可能な対象は11例で平均年齢68.8歳、女性7例、HCC治療歴あり7例、C-P A/B/Cは6/3/2で血清アンモニア値は132±16 (82-231)あった。【結果】抑肝散投与後によりNPTが完遂できる症例を認めた。performance timeはBlock design testを除いて短縮傾向で,NCT-Aにおいて有意な短縮を認めた(p=0.012)。睡眠障害は有意に改善された(p=0.03)。SF-36のrole-physical subscale scoreは有意に改善した。アンモニア値やBTRにおいて有意な変化はみられなかった。dizzinessを1例に認めた。肝機能障害の増悪や血清カリウムの低下は認められなかった. 【結論】抑肝散はNPTで評価されるミニマル肝性脳症の状態を改善し、良眠を増加させ、肝硬変症例においても比較的安全に使用できると考えられた.。
索引用語 ミニマル肝性脳症, 抑肝散