セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 消W6-16:

肝硬変おける糖代謝異常の現状と肝性糖尿病の新規スクリーニング検査法の有用性

演者 山崎 隆弘(山口大・消化器病態内科学)
共同演者 土屋 昌子(山口大・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・消化器病態内科学)
抄録 【目的】糖尿病は、肝硬変(LC)の予後を悪化させ、肝細胞癌のリスクファクターでもあるが、肝硬変患者の耐糖能異常は、空腹時血糖(FBS)やHbA1cが正常以下を示し、食後高血糖となることが多く、肝性糖尿病の診断を困難としている。今回、インスリン抵抗性と75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)での糖代謝異常の現状と肝性糖尿病の新規スクリーニング検査法(13C-glucose呼気試験)の有用性について報告する。【方法】1) 糖代謝異常の現状:FBS110mg/dl未満およびHbA1c基準値以下のLC148例(年齢中央値:64, Child-Pugh A/B:82/66, 原因B/C/B+C/others:94/23/5/26)にOGTTならびにHOMA-IRを評価した。2)FBSおよびHbA1c正常範囲のLC38名にOGTTと同時に13C-glucose100mgを経口投与し、検査前、30分、60分、120分の呼気を採取し、Helicobacter pyloriの尿素呼気試験と同様の方法で、検査前とのデルタ(Δ)値として測定した。【結果】1)OGTTの評価では、正常型(NGT)14.5%、境界型(IGT)42.7%、糖尿病型(DM)42.8%、であり、インスリン抵抗性(HOMA-IR>2.5)(以下IR)は68.4%に認めた。内訳としてIR-,NGT7.6%、IR+,NGT6.9%、IR-, IGT12.3%、IR+,IGT30.4%、IR-,DM11.7%、IR+,DM31.1%であった。2) OCTT2時間値(2h-PG)と呼気試験2時間Δ値(2h-BT) (r = -0.60, P < 0.0001)ならびにAUC(area under the curve) insulin (r = 0.40, P = 0.013) で有意な相関が認められた。DM診断に対する2h-BTのROC解析では、AUCは0.88であり、感度82%、特異度85%(cut-off 3.5‰)であり、多変量解析でも2h-BTはDM診断の有意な独立因子(OR 3.54, P = 0.026)であった。【結論】肝硬変患者の糖代謝異常のパターンは様々であり、個別化治療の必要性が考えられる。また13C-glucose呼気試験は、採血が不要であり、患者の負担が少ないことから肝性糖尿病の外来スクリーニング検査としての有用性が示唆された。
索引用語 肝硬変, 13C-glucose呼気試験