セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 肝W6-17:

C型慢性肝疾患患者における血清クロム値測定の意義について

演者 樋本 尚志(香川大附属病院・総合診療部)
共同演者 米山 弘人(香川大・消化器・神経内科), 正木 勉(香川大・消化器・神経内科)
抄録 【目的】血清クロム (Cr) 値は2型糖尿病患者でしばしば低下しており,Cr欠乏によってインスリン抵抗性が出現することが明らかとなっている。また,ヘモクロマトーシス患者でCrが欠乏することが報告されているが,肝疾患におけるCrの臨床的意義について解析した研究報告は少ない。今回,C型慢性肝疾患患者における血清Cr値を測定し,その臨床的意義について検討した。【方法】対象は糖尿病を合併していないC型慢性肝疾患患者35例で,比較対照群として10例の健常者(NHC)を登録した。対象患者における血清Cr, Alb, ferritin, ALT値を測定した。なお,血清Crの測定下限は0.02μg/dlであった。また,肝組織におけるstagingは新犬山分類によって評価した。インスリン抵抗性はHOMA-IR値を算出し,2.5以上をインスリン抵抗性ありとした。【成績】C型慢性肝疾患患者13例 (37%) の血清Cr値は測定限度以下であったのに対して,測定限度以下のNHC症例はみられなかった。それぞれのstageにおける血清Cr値は,NHC:0.52±0.19μg/dl,F1:0.34±0.40μg/dl (n=11),F2:0.56±0.60μg/dl (n=13),F3:0.82±0.33μg/dl (n= 5),F4:0.62±0.59μg/dl,(n= 6)であり,血清Cr値の低下とstagingの進展とは相関しなかった。血清Cr値とAlb またはALT値との間にも相関は認められなかった。一方,C型慢性肝疾患患者における血清Crとferritin値との間には,緩やかな負の相関が認められた (r=-0.354, p=0.0371)。また,C型慢性肝疾患患者のうち9例 (26%)はインスリン抵抗性ありと診断され,その血清Cr値はインスリン抵抗性のない患者のそれと比較して若干低値であった(0.47±0.55μg/dl vs 0.56±0.52μg/dl, p=0.5461)。【結論】C型慢性肝疾患におけるCr欠乏は比較的高頻度にみられた。 Cr値が欠乏することによってC型慢性肝疾患患者における鉄過剰状態が惹起されることが示唆された。
索引用語 HCV, クロム