セッション情報 特別講演2

タイトル SL2:

iPS細胞技術が可能にする新しい医療

演者 中内 啓光(東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センターERATO中内幹細胞制御プロジェクト)
共同演者
抄録 体細胞を初期化してES細胞と同等の能力を持つ幹細胞を誘導するiPS細胞作製技術が確立され,胚を壊したり核移植をすることもなく“患者自身の多能性幹細胞”を利用する道が開けた.患者や正常人から樹立したiPS細胞は,まず初めにヒト細胞の新しいソースとして病態解析,創薬,毒性試験等へ利用されるだろう.次に遺伝子を修復して遺伝病を根治する遺伝子矯正治療や,抗原特異的なT細胞を若返らせてから免疫療法を行うなど,これまでは考えられなかったような新しい遺伝子・細胞治療が可能になるだろう.また,多能性幹細胞の高い増殖能を利用して血液細胞を産生し,献血に代わる安定した輸血の供給源としての利用も考えられる.さらにはiPS細胞から患者自身の細胞によって構成された臓器を異種動物個体内で作出し,移植するといった再生医療も夢ではないかもしれない.我々の最近の研究を紹介しながら,ノーベル賞に輝いたこの素晴らしい技術が切り拓く新しい医療の可能性について概説する.
索引用語