セッション情報 | 特別講演4 |
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タイトル | SL4:福島原発事故と県民健康管理調査事業 |
演者 | 山下 俊一(福島県立医科大学DELIMITER長崎大学大学院医歯薬学総合研究科) |
共同演者 | |
抄録 | 東京電力(株)福島第一原発事故では,急性放射線障害の発症は皆無であったものの,従来からの事故対応の訓練や緊急被ばく医療ネットワークの準備をはるかに凌駕し,放射性降下物による広範囲な環境汚染と甚大な精神・社会心理的な影響を引き起こした.当初の非常事態への対応から,今では除染や賠償など大規模な復興支援事業が進められている.各種事故調査委員会の報告書でも事故の原因究明からその責任体制などが厳しく指摘されているが,風評被害や偏見,差別などが依然として問題となっている. 一方,医療関係者にとっても放射線安全防護の基準についての考え方と放射線健康リスクの確率的影響への理解と洞察が不可欠である.その結果,医療人そのものが,良質な放射線リスクコミュニケーションの担い手になることができる.特に原発事故直後は,大量の放射性ヨウ素の環境中への放出に対する甲状腺ブロックが安全防護上重要となる.また半減期の問題からその後の放射性セシウムの体内動態や健康リスクも正しく理解される必要がある.外部被ばくのみならず,内部被ばくによる健康リスク管理が長期にわたり求められるものの,放射線生物学,放射線疫学の研究基盤は脆弱であり,基礎研究分野の人材育成もまた大きな課題である. 福島県では全県民の健康見守り,すなわち健康管理調査事業が,事故3ヶ月後の5月には福島県立医大と県が主導性を発揮し,国の復興支援の中で立ち上げられている.全県民を対象とした基本調査(初期4ヶ月間の外部被ばく線量推計)と,避難住民を中心とする詳細調査が開始されている.未曾有の事故遭遇によるトラウマ,環境汚染に伴う二次被害への不安など,身体影響のみならず精神・社会心理的影響も大きい.一般住民における低線量被ばく,とりわけ微量慢性被ばくによる健康影響への不安と恐怖は払拭されず,環境モニタリングと食の安全モニタリングに加えて,県民健康管理調査事業を含む健康モニタリングと住民サービス提供が益々重要となっている. 本講演では,チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の相違点を紹介し,県民健康管理調査事業(http://fukushima-mimamori.jp/)について,外部被ばく線量の推計結果を含め,甲状腺超音波検査,健康診査,こころの健康度・生活習慣調査,妊産婦調査の概要を紹介する.これら長期にわたる県民の健康見守り事業が,福島県の復興と再生の一助になることが期待されている. |
索引用語 |