抄録 |
1983年電子内視鏡の開発と普及による内視鏡診断学の進歩と相俟って1980年代~1990年代はEMRによる早期消化管癌の内視鏡治療が発展した.2000年代以降,ESDを機軸とした内視鏡治療が飛躍的に進歩してきている.またNarrow Band Imaging(NBI)に代表される画像強調観察により,新しい診断学も構築されてきた.高解像度の内視鏡やNBI併用拡大内視鏡の登場により,組織の異型度を推察することが可能となってきており,“内視鏡的病理学”とも呼ぶ内視鏡時代が到来している.EndocytoscopyやConfocal Lase Endomicroscopy(CLE)などの顕微内視鏡も臨床応用され,高い評価が得られつつある.われわれは,プローブ型CLEと粘膜下層内視鏡法の併用により,筋層間神経叢の動的観察および消化管運動機能的障害の視覚化を目指した研究を行っており,消化管運動機能障害に対する病因論的解析と新たな治療法の開発を目指している(GIE 2012;75:405-10,Gastroenterology 2013 in press).光学的分子イメージングの研究成果も相次いでいる.このような新しいイメージング技術は,生命の基礎的仕組みや様々な疾病の病態を明らかにし,より精度の高い診断法や効果的な治療法の追求,オーダーメイド医療への手がかりとなる.消化器疾患の新たな次元の診断・治療の可能性とbreak-throughをもたらす期待が大きい.内視鏡治療においては,Polypectomy(1968年),EMR(1983年),ESD(1998年)と15年前後でイノベーションが起きている.今後,再生医療の内視鏡応用,Micro-Robot Endosurgeryの方向性も進められよう.近未来に起こる確かな予測は,高齢化,肥満化であり,疾病構造も大きく変化していく.そのような観点からEndoscopic Bariatric(Metabolic)Therapyの安全で確実な方法の確立も課題である. |