セッション情報 シンポジウム2

肝画像診断の最前線

タイトル S2-7[追加]:

EOB-MRIの肝細胞癌切除前画像診断への導入による肝切除後無再発生存率および累積生存率に与えるインパクト

演者 松田 政徳(山梨大学外科学第一講座)
共同演者 藤井 秀樹(山梨大学外科学第一講座), 市川 智章(山梨大学放射線医学講座)
抄録 (はじめに)EOB-MRIは肝細胞癌(HCC)の検出能に優れ,さらに従来は診断の困難な早期HCCの検出も可能であり,術前画像診断法として不可欠のモダリティーである.しかし,HCC肝切除後の治療成績に与える影響は明らかでない.今回,術前EOB-MRIのHCC肝切除後の再発率および生存率に与える影響を明らかとすることを目的とした.(対象と方法)2008年のEOB-MRI導入後3年間のHCC治癒切除症例76例(施行例)と,それ以前の3年間の治癒切除例70例(非施行例)を対象とした.術前画像診断はEOB-MRI以外は全例でエコー,造影CT,血管造影,血管造影下CTを実施した.全経過で手術適応,術後経過観察は同様で,多血性病変の検出時を再発診断時とした.(結果)EOB-MRI施行76例と非施行例70例で,年齢,性別,肝炎ウイルス感染状況,糖尿病併存率,アルコール多飲歴,肝障害度,p-Stage,腫瘍数,腫瘍径,脈管侵襲,肝硬変併存率に差は認められなかった.無再発生存率は1年,3年,5年の順に施行例が81.2%,67.9%,(5年未算出),非施行例が82.1%,41.2%,30.3%と施行例で有意に良好であった(P<0.01).一方,累積生存率は施行例が100%,88.5%,(5年未算出),非施行例が97.0%,86.0%,74.3%と有意差を認めなかった(P=0.87).(考察)今回の検討で両群の観察期間に差はあるものの,EOB-MRI施行によりHCC治癒切除後の無再発生存率が向上することがはじめて明らかとなった.しかしながら,現時点で累積生存率の向上には至っていない.この原因として,肝切除前のEOB-MRI施行により,従来画像でも診断可能な進行型のHCCに加え,比較的早期のHCCが術前に発見され同時切除されることにより,肝切除後の無再発生存率は向上するものの,患者の予後を決定する病変は従来画像でも診断可能な進行型のHCCである可能性が考えられる.
索引用語