セッション情報 シンポジウム3

NAFLD/NASHの病態解明と治療への展開

タイトル S3-4:

NAFLDにおける歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)の炎症・線維化進展への関与

演者 中原 隆志(広島大学病院消化器・代謝内科)
共同演者 兵庫 秀幸(広島大学病院消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院消化器・代謝内科)
抄録 【背景】Nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)はメタボリックシンドロームの消化器表現型とされ,インスリン抵抗,肥満,高脂血症,2型糖尿病などの多因子と密接に関連している.歯周病は,厚生労働省の調査によると日本人で約7割が感染しているとされ,糖尿病の増悪や心臓病,脳卒中のリスクを高めるとの報告がある.【目的】歯周炎の主原因物質であるP.g感染とNAFLDの関連性を調べる.【方法】肝生検を施行し,組織学的に診断されたNAFLD200例を対象とした.血清P.g抗体価測定,肝組織のP.g免疫染色を行い肝臓への感染の有無を検討.また,P.g感染と組織学的所見(Brunt分類に準じて),各種血液生化学データとの関連性を検討した.P.g血清抗体価は,Pg381株とPgSu63株を測定し,健常者群の平均値の+2S.D以上を陽性と設定した.【結果】P.gの検出率はPg381株で39.5%(79/200例),PgSu63株で41.0%(82/200例)であり,健常者と比較して有意に高かった.また,肝組織内のP.g陽性率(感染率)は64.6%であり,これら肝臓へのP.g感染の認められたNAFLDにおいて有意に線維化進展例が多かった(p=0.0093).また,P.g血清抗体価陽性症例では陰性症例と比べ,年齢(p=0.020),HbA1c(p=0.03),4型コラーゲン7S(p=0.035),ヒアルロン酸(p=0.011)が有意に高く,2型糖尿病(p=0.002)が多かった.【考察】NAFLD患者では歯周病菌(P.g)感染が多く認められた.我々は,NAFLDの線維化進展に寄与する多因子のなかで,糖代謝異常が最も線維化に寄与すると報告してきた.今回の検討により,P.g自体が肝臓に感染していることが実証され,糖尿病増悪にも寄与するとともに,lipopolysaccharide(LPS)による間接的障害以外に肝臓への感染による直接障害機序もNAFLDの病態進展に関与している可能性が示唆された.
索引用語