セッション情報 シンポジウム3

NAFLD/NASHの病態解明と治療への展開

タイトル S3-5:

非B非C肝発癌におけるオートファジー関連蛋白の関与

演者 今 一義(順天堂大学医学部消化器内科)
共同演者 池嶋 健一(順天堂大学医学部消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】肝発癌は慢性肝疾患の重要な予後決定因子である.非ウイルス性肝障害からの肝発癌メカニズムはまだ不明な点が多く,HCV肝癌との相違も明らかではない.癌抑制遺伝子Ptenの肝特異的ノックアウトマウスは脂肪性肝炎由来肝癌と酷似した病理像を呈し,肝組織内のオートファジーが抑制されている.非ウイルス性肝癌のPtenおよびオートファジー特異的に分解されるp62の発現を評価し,HCV由来肝癌との比較を含めた検討を行った.【方法】2009年1月-2012年1月の間に肝癌に対して肝部分切除を受けたHCV抗体・HBs抗原陰性の17例(非B非C群)とHCV抗体陽性の20例(HCV群)を対象とした.結腸・直腸癌の肝転移癌症例9例を対照群とした.癌部および背景肝(癌近傍部,遠位部)のPtenおよびP62の発現を免疫組織染色で検出し,Ptenは実質細胞の染色の強さで0-3の4段階で評価し,P62は実質細胞内のP62陽性封入体の発現頻度を0-3の4段階で評価した.【結果】対照群ではPtenの発現に部位による変化がなかったのに対して,HCV群では遠位-近傍-癌部と段階的にPtenの発現が低下した.非B非C群ではその変化がより顕著となり,背景肝遠位・近傍部と比較して癌部でPten発現の有意な低下を認めた(1.5±0.2,1.2±0.3 vs. 0.1±0.1,p<0.05).P62の発現は対照群では癌部で有意な低下を認めた.それに対しHCV群・非B非C群では遠位-近傍-癌部と段階的な亢進を認め,遠位・近傍部背景肝と比較して癌部で有意な上昇を認めた(HCV群:0.4±0.1,0.5±0.5 vs. 1.7±1.2,p<0.05,非B非C群:0.8±0.1,1.0±0.2 vs. 1.9±0.3,p<0.05).【結論】PtenはHCV由来,非B非C肝癌由来のいずれにおいても癌部に近づくにつれて発現が低下したが,非B非C肝癌ではその傾向がより顕著であり,Pten発現低下が肝発癌のトリガーである可能性が示唆された.一方,P62は癌部での発現が亢進しており,オートファジーの低下が肝癌の進展に寄与している可能性が示された.Ptenシグナルのコントロールが肝発癌予防のターゲットとなる可能性が示唆された.
索引用語