セッション情報 シンポジウム3

NAFLD/NASHの病態解明と治療への展開

タイトル S3-7:

プロテオミクスから同定した非アルコール性脂肪性肝疾患の分子マーカーの臨床的意義と新しい診断法の確立

演者 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 岡上 武(大阪府済生会吹田病院), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】我々は,血清プロテオミクス解析で健常者より非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者血清中に多く存在するタンパクの一つが高分子量Kininogen断片(Kini-F)であることを報告している.本研究ではKini-Fを定量するELISA系を作製し,病態との関連を検討するとともに,NASHの診断マーカー候補であるCK-18断片(CK-18F),Apolipoprotein E(ApoE)を組み合わせた新しい診断法の臨床的有用性を検証した.【方法】NAFLD患者44例と健常者26例の血清を用いて,プロテオミクスによりタンパク質を同定し,ELISA系を作製した.さらに,健常者41例,単純性脂肪肝(SS)30例,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)101例におけるKini-F濃度を測定した.また,CK-18F,ApoEも同時に測定し,マルチマーカー解析(決定木)を用いたNASH診断の有用性を検討した.【成績】プロテオミクスにより,健常者よりNAFLDで有意に高い蛋白ピークの一つはKini-Fであった.また,Western BlotとELISAで検討した全長キニノーゲン濃度は,NAFLD患者では低下し,ELISA測定したKini-F濃度は健常者よりNAFLD患者で高値であったが,NASHはSSよりむしろ低値であった.また,Kini-FはALTやCK-18Fとは相関しなかった.一方,CK-18FとApoEは健常者よりNAFLDで有意に高く,SSよりNASHは高い傾向であった.Kini-F,CK-18F,ApoEおよび3つのマーカーを組み合わせた決定木によるNASHの正診率は,それぞれ50%(50例/101例),55%,38%,77%で,SSの正診率も決定木が最も高値で,健常者は同等であった.【結論】NAFLDではキニノーゲン分解が亢進していると考えられたが,NASH特異的ではなかった.また,Kini-Fや既知のNASHマーカー候補を組み合わせて作製した決定木は,診断や治療効果判定に有用な新しい分子マーカーになる可能性がある.
索引用語