セッション情報 シンポジウム3

NAFLD/NASHの病態解明と治療への展開

タイトル S3-10:

肝および内臓脂肪の炎症制御を介した分岐鎖アミノ酸によるNAFLD関連肝腫瘍形成の抑制

演者 清水 雅仁(岐阜大学大学院医学部消化器病態学)
共同演者 寺倉 大志(岐阜大学大学院医学部消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大学大学院医学部消化器病態学)
抄録 【目的】肥満や内臓脂肪の増加に伴う慢性炎症は,肝発癌に深く関与している.今回我々は,肥満を有する非代償性肝硬変患者の肝発癌を抑制した分岐鎖アミノ酸(BCAA)が,肝および脂肪における炎症を制御することでNAFLDモデルマウス(db/dbマウス)に自然発症する肝前癌病変(foci of cellular alteration:FCA)を抑制するか検討した.【方法】db/dbマウス(5週齢雄)に,3%BCAAまたは3%casein含有食を34週間投与し,FCAの抑制効果と肝細胞の増殖活性を検討した.肝臓および脂肪組織における肥満・炎症・細胞増殖・apoptosis・細胞周期関連分子のmRNA発現を,real time RT-PCRで比較検討した.脂肪組織におけるマクロファージの浸潤を,F4/80の免疫染色を行い評価した.【結果】casein群(対象群)と比較し,BCAA投与群においてFCAの発生数は有意に減少し,肝臓におけるPCNAおよびc-fos mRNAの発現は低下した.BCAA投与群の肝組織では,IL-6,IL-1β,IL-18,TNF-α,Bcl-2,cyclin D1 mRNAの発現抑制とPPARγ,Bax,p21,p27 mRNAの発現亢進が認められた.casein群では,脂肪組織にマクロファージの強い浸潤が認められたが,BCAAはこれを抑制するとともに,脂肪細胞のサイズを縮小した.またBCAA投与群において,脂肪組織におけるadiponectin,PPARα,PPARγ mRNAの発現亢進とMCP-1 mRNAの発現抑制が認められた.【結論】BCAAは,肝および脂肪組織における慢性炎症状態を改善するとともに,肝におけるPPARγの発現亢進,apoptosisの誘導,および細胞周期の制御を介して,肝細胞の増殖活性を抑制することで,NAFLDモデルマウスにおける肝前癌病変の発生を抑制した可能性が示唆された.
索引用語