セッション情報 シンポジウム3

NAFLD/NASHの病態解明と治療への展開

タイトル S3-11:

内因性エンドトキシン抑制によるNASH肝線維化抑制効果

演者 堂原 彰敏(奈良県立医科大学第3内科(消化器・内分泌代謝内科))
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医科大学第3内科(消化器・内分泌代謝内科)), 福井 博(奈良県立医科大学第3内科(消化器・内分泌代謝内科))
抄録 【目的】NASHの線維化進展機序は多因子的であるが,内因性エンドトキシンの重要性が指摘されている.今回我々は,線維化進展に内因性エンドトキシンが重要な役割を果たしているコリン欠乏アミノ酸(CDAA)食投与ラットNASHモデルを用いて,難吸収性抗菌薬投与により内因性エンドトキシンを減少させることによる肝線維化抑制効果について検討した.【方法】雄性F344ラットをCDAA投与群とCDAA+抗菌薬投与群に分け,さらにコリン添加アミノ酸(CSAA)食投与ラットを対照群とし,8週後に動物を犠死させ,各種検討を行った.難吸収抗菌薬はPolymixin B sulfate 1g/LおよびNeomycin 3g/Lをdrinking waterに溶解し,1週休薬・3週投与を2回繰り返し計8週投与した.肝線維化は通常の組織学的検討に加えてSirius red染色での線維化面積をイメージアナライザーを用いて半定量して評価した.さらに,線維化進展に中心的役割を果たしている活性化肝星細胞(Ac-HSC)に対する抗菌薬の作用を検討するためにα-SMAを指標とした免疫染色を行い,real time PCRにてTGF-β,collagen-1の遺伝子発現を評価した.【結果】CDAA投与群では対照群とは異なり著明な肝線維化とAc-HSCの増加が認めた.CDAA+抗菌薬投与群ではCDAA投与群に比し,肝線維化は有意に抑制され,Ac-HSCの増加も同様に抑制された.また,collagen-1発現も抗菌薬投与により有意に抑制され,TGF-β発現も低下傾向を示した.【結論】実験的ラットNASHモデルにおいて抗菌薬投与が抗線維化効果を示したことから,肝線維化進展過程への内因性エンドトキシンの関与が示唆された.その機序として内因性エンドトキシン抑制がHSCの活性化を阻害し,TGF-β,collagen産生を低下させることが考えられた.難吸収抗菌薬投与は線維化の進行を抑制し,NASH治療に新たな可能性を開くと考えられた.
索引用語