セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-1:

肝臓への鉄沈着の非侵襲的な評価方法について―各種慢性肝疾患との関連―

演者 斎藤 聡(虎の門病院肝臓センター)
共同演者 池田 健次(虎の門病院肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院肝臓センター)
抄録 【はじめに】肝臓への鉄沈着に関しての評価方法として,画像診断はヘモクロマトーシスなどの高度鉄沈着があるのみで,報告が少ない.これまで経過観察に関しては,血清のフェリチンをモニターにして肝臓内の鉄量を評価することが多かった.肝細胞の鉄量を非侵襲的に評価することは病態評価の上でも重要と考える.そこで,MRIによる肝内の鉄沈着の定量化を試みた.【対象と方法】MRIにて肝内鉄定量評価を施行した各種慢性肝疾患556例である.年齢28-86歳(中央値66歳)男女比372:184,HCV364例,HBV95例,NAFLD83例,ヘモジデローシス14例で,肝硬変254例(46%).MRIは1.5T装置を使用し,磁化率強調画像(SWI)とT2*マップを作成しT2*値を求めた.SWIによる視覚的評価では鉄沈着はG0/1/2/3の4段階に分類した.病理学的には肝細胞への鉄沈着を鉄染色で,なし,軽度,中等度,高度の4段階に分類.血清のフェリチン濃度とも比較した.【成績】1)SWIによる鉄沈着:分布はG0 49%,G1 39%,G2 9%,G3 3%,T2*値はG0 23.9±3.9,G1 22.6±4.7,G2 16.4±4.6,G3 7.8±1.2(ms)(G0+G1/G2/G3 p<0.01).2)組織像との比較:なしはG0 95%,G1 5%,軽度はG0 5%,G1 80%,G2 15%,中等度G2 87%,G3 13%,高度G3 100%.3)フェリチンと各種肝疾患との関係(フェリチン中央値):HBVでは,G0 40%(96),G1 43%(124),G2 17%(182),G3なし,HCVではG0 54%(82),G1 31%(182),G2 18%(676),G3 7%(1062),NASHではG0 55%(180),G1 35%(227),G2 10%(702),ヘモジデローシスでは全例G3(1061)であり,HCVはフェリチンを反映した肝細胞への鉄沈着がみられ,HBVは鉄沈着が軽く,NASHはフェリチン値に比して,鉄沈着が軽い傾向がみられた.HCVおよびNASHではG2以上はすべて肝硬変であった.【結語】肝組織への鉄沈着はMRIである程度把握可能であり,血中のフェリチン値とは各種慢性肝疾患で異なることが明らかとなった.除鉄治療の適応および治療効果判定に応用可能と思われた.
索引用語