セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-2:

走査型蛍光X線顕微鏡を用いた肝組織内鉄分布の解析

演者 木下 秘我(神戸大学肝胆膵外科)
共同演者 福本 巧(神戸大学肝胆膵外科), 具 英成(神戸大学肝胆膵外科)
抄録 慢性C型肝炎において,肝内の鉄(Fe)過剰沈着が酸化ストレスを惹起し,線維化促進や発癌に関与していることが示唆されている.従来のベルリンブルー等の鉄染色では肝内の正確なFe沈着を測定できなかったため,放射光を用いた新しい検出法により微量金属元素の肝組織内局在を解析した.(方法)SPring-8の走査型蛍光X線顕微鏡を用いて正常肝,慢性C型肝炎,C型肝硬変の外科切除切片内の微量金属元素の二次元マッピングと定量を行い,ベルリンブルー染色や酸化ストレスマーカーによる免疫染色像と比較した.(結果)従来の方法ではFeの検出が全く不可能であった正常肝でもZone毎の測定が可能であり,Feの集積は中心静脈域(Zone3)と比べ門脈域(Zone1)の方が有意に高かった.また,これは酸化ストレスマーカーである4HNE染色による染色部位と一致していた.一方で,慢性C型肝炎やC型肝硬変では,小葉辺縁部のFeの集積が小葉中心部と比べ有意に高かった.(結論)正常肝では既に門脈域がFeの集積により酸化ストレスの励起状態にあること,慢性C型肝炎,C型肝硬変でもFeの集積が肝障害の一因になることが示唆された.
索引用語