セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-3:

C型慢性肝炎におけるHCV感染と鉄蓄積のインスリン抵抗性におよぼす影響

演者 小林 由直(三重大学保健管理センター)
共同演者 岩佐 元雄(三重大学消化器・肝臓内科), 竹井 謙之(三重大学消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】C型慢性肝炎(CH-C)の肝臓では鉄蓄積が高頻度に認められ炎症の進展や発癌に影響を与えるが,鉄沈着が糖代謝に及ぼす影響は十分に検討されていない.我々は,CH-CにおけるHCV感染および鉄沈着がインスリン抵抗性(IR)に及ぼす影響およびそのメカニズムを明らかにする目的で,血液データおよび肝組織について検討を行い,さらに,活性酸素種(ROS)を発生させた肝細胞株において糖新生の亢進メカニズムを検討した.【方法】ペグインターフェロン+リバビリン投与を行なったCH-Cの患者(n=130)における治療前のHOMA-IRを測定し,SVR例において治療前後におけるHOMA-IRの変化を検討した.肝生検を施行したCH-C患者(n=42)について,HOMA-IRを含む臨床検査データ,鉄沈着や8-OHdGを含む肝組織学的評価,および肝組織における鉄代謝および糖新生関連遺伝子の発現について検討した.さらにdiethylmaleate(DEM)で処理したHepG2細胞株を用いて,ROS産生によるFOXO-1の発現変化および糖新生酵素遺伝子の発現変動について検討した.【成績】HOMA-IR≧2.0の頻度はgenotype 1で38.3%,genotype 2で44.4%であった.SVRが得られた症例では,治療終了24週後の平均HOMA-IRは治療前よりも有意に低下していた(p=0.01).血清フェリチン値は,肝における鉄沈着スコアおよび8-OHdGと相関し,HOMA-IRとも有意な相関(r=0.464,p=0.02)が得られた.FOXO1遺伝子発現量は8-OHdGおよびPEPCK遺伝子発現量と有意に相関した.HepG2細胞において,DEMの濃度依存的にFOXO1遺伝子の発現量増加およびリン酸化FOXO1/非リン酸化FOXO1蛋白比の低下が認められ,PEPCK遺伝子発現量は増加していた.【結論】HCV感染および鉄過剰は,インスリン抵抗性に影響を及ぼす一つの因子であり,鉄過剰は,ROSの産生を介したFOXO1を通じて糖新生を促進し,インスリン抵抗性に影響を与えていることが示唆された.
索引用語