セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-4:

摘脾が肝臓の鉄蓄積に及ぼす効果についての検討

演者 仁科 惣治(川崎医科大学肝胆膵内科学)
共同演者 富山 恭行(川崎医科大学肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医科大学肝胆膵内科学)
抄録 【目的】脾腫・血小板減少を伴うC型肝硬変に対して摘脾後にIFN治療を行うことも少なくないが,摘脾が肝臓に及ぼす影響は不明である.脾臓は鉄を貯蔵する体内最大の網内系組織である一方,肝臓の鉄過剰は肝発癌因子と考えられている.そこで摘脾が肝臓の鉄蓄積に及ぼす影響について検討を行った.【方法】8週齢♂のC57BL/6マウスに対し摘脾(摘脾群),あるいはコントロールとして開腹手術のみ(sham群)を行った2群を設定し,各群に軽微な鉄過剰餌で2ヶ月および6ヶ月間飼育した後に肝内鉄含有量,鉄代謝関連分子ならびに酸化ストレス等の評価を行った.【結果】摘脾群はsham群に比べて,鉄過剰食飼育2ヶ月後より組織学的に肝内の炎症細胞浸潤が増強し,6ヶ月後にはALTの有意な増加を示した.肝内では成熟マクロファージマーカーであるF4/80や炎症性マクロファージマーカーであるCd11cならびに,IL-1β,IL-6,TNFαのmRNAも発現が亢進していた.このためリン酸化型STAT3蛋白,hepcidin mRNAの発現も亢進していた.しかし,肝内鉄含有量はsham群にくらべて低下することはなく,組織学的にはKupffer細胞を中心とした鉄蓄積を認め,肝全体のFerritin蛋白の発現は有意に高かった.さらに,摘脾群では酸化ストレスに対する抗酸化能の指標である血清BAP/dROMが,鉄過剰食飼育6ヶ月後より有意に低下していた.【結語】摘脾後は軽微な鉄負荷に対してもKupffer細胞が活性化され,炎症性サイトカインの産生に伴う肝臓の炎症が惹起される.これに伴いhepcidinの産生は亢進するものの,Kupffer細胞内の鉄蓄積により肝内の鉄含有量は減少せず,むしろ炎症性サイトカインにより肝内の酸化ストレスは亢進することが明らかとなった.
索引用語