セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-5:

C型慢性肝疾患患者における亜鉛欠乏とそれに伴う代謝異常について

演者 樋本 尚志(香川大学総合診療部)
共同演者 米山 弘人(香川大学消化器・神経内科), 正木 勉(香川大学消化器・神経内科)
抄録 【目的】C型肝炎ウイルスの持続感染によってインスリン抵抗性,肝脂肪化や鉄過剰状態といった代謝異常をしばしば伴う.一方,亜鉛(Zn)は肝線維化や血糖の恒常性に重要な役割を果たしている.今回,C型慢性肝疾患(HCV-related CLD)患者におけるZn欠乏とそれらの代謝異常との関連について検討した.【方法】対象はC型慢性肝炎および肝硬変患者である.肝組織における酸化ストレスは,8-OHdGの発現を免疫組織化学法によって軽度,中等度,高度と半定量化し,血清Zn値が65μg/dl以上とそれ未満(亜鉛欠乏)の2群に分けて比較した.肝脂肪化と線維化の程度は,Bruntらの分類および新犬山分類によってそれぞれ評価した.対象患者におけるインスリン抵抗性はHOMA-IR値で,肝組織における鉄沈着の程度は血清ferritin値でそれぞれ判定した.【成績】HCV-related CLD患者の肝組織における8-OHdGの発現は,Zn欠乏群で高度な症例が多い傾向にあった(p=0.0518).肝脂肪化と血清Zn値との関連をみると,肝脂肪化が進行するにつれて血清亜鉛値は低下していた.また,肝線維化が進行すると血清Zn値は低下し,F1とF4の間で有意差を認めた(p=0.020).次に,血清Zn鉛値とHOMA-IR値との関連をみると,両者の間で緩やかな負の相関が認められた(r=-0.292,p=0.0308).この機序を解明すべく血清Zn値とferritin値との関連をみると,緩やかな負の相関がみられ(r=-0.281,p=0.0325),血清ferritin値とHOMA-IR値との間には正の相関がみられた(r=0.452,p=0.0005).なお,血清ferritin値とALT値との間にも,有意な正の相関が認められた(r=0.667,p<0.0001).【結論】HCV-related CLD患者におけるZn欠乏によって酸化ストレスが促進されて鉄過剰状態になり,その結果,インスリン抵抗性や肝組織における炎症が惹起され,それに引き続いて肝線維化や肝脂肪化が生じることが示唆された.
索引用語