セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-6:

ウイルソン病および重症肝障害における銅代謝の検討

演者 千手 倫夫(産業医科大学医学部第3内科学)
共同演者 本間 雄一(産業医科大学医学部第3内科学), 原田 大(産業医科大学医学部第3内科学)
抄録 【目的】銅代謝異常症であるウイルソン病では血中セルロプラスミン(以下,CPN)低値と尿中銅排泄(以下,尿中Cu)増加が認められ,その診断に有用である.一方で,重症肝障害症例においては,肝細胞でのCPN合成能低下による血中CPN低下と肝細胞からの銅逸脱による尿中Cu増加があり,ウイルソン病との鑑別が困難な可能性がある.また,重症肝障害症例においては出血傾向などの理由で肝生検施行が困難なことも多い.そこで,重症肝障害症例での銅代謝について検討すると共に,ウイルソン病のより正確な診断について考察することを目的とする.【方法】2009年6月~2012年8月当科を受診した未治療のウイルソン病患者3例(W群)ならびに重症肝障害症例(PT% 50%以下を基準)のうち検索可能であった73例を対象に血清CPN,尿中Cu,尿中銅/尿中クレアチニン比を測定し,CPN低値(+)・尿中Cu過多(+)(1群),CPN低値(+)・尿中Cu過多(-)(2群),CPN低値(-)・尿中Cu過多(+)(3群),CPN低値(-)・尿中Cu過多(-)(4群)に分けてχ2検定で検討した.【結果】急性肝障害22例,慢性肝障害51例で,平均年齢64.9歳,平均CPN 30.3 mg/dl,平均尿中Cu排泄比0.195であった.1群:3例,2群:3例,3群:24例,4群:43例であった.CPNおよび尿中Cu過多のみでは,重症肝障害のうち8.2%はウイルソン病と類似する検査結果となることが示唆された.1群の3例(B型de novo肝炎,アルコール性肝障害,肝細胞癌破裂)では,急激な肝障害を呈していた.【結論】重症肝障害症例においては,血清CPN低値と尿中Cu過多のみでは,ウイルソン病への誤診に繋がる可能性があり,慎重な病態把握に努める必要がある.
索引用語