セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-7:

C57BL/6における鉄代謝異常の解析

演者 是永 匡紹(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
共同演者 是永 圭子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】鉄代謝異常は発がんの促進因子であり,C型慢性肝疾患や脂肪性肝疾患では肝内鉄過剰状態が存在する.C型慢性肝疾患ではhepcidin発現低下が鉄代謝異常に関与し,瀉血により肝発がんが抑制されるが,脂肪性肝疾患における鉄代謝異常の意義や臨床的な長期予後は未だに明らかにされていない.今回われわれは,C57BL/6J(J)とJに比べ体重が増加傾向にあるC57BL/6N(N)を用いて以下の検討を行った.【方法】J(n=7)とN(n=6)に生後2ヶ月から鉄過剰(carbonyl iron 225mg/kg)食とcontrolにMF食を与え6ヶ月後,肝を摘出し肝内鉄濃度,中性脂肪,血清より肝機能,血糖値,IRI値,hepcidinや酸化ストレスに対する抗酸化能としてBAP/dROMを測定し解析した.【成績】MF飼育ではNが軽度の体重増加を認めるのみであった.鉄過剰食の飼育量に関わらずNはJに比べ体重(41±2.7 vs 35±1.9g),ALT(412±186 vs 10±0IU/L),FBS(366±158 vs 203±89mg/dL)とIRI(1.5±0.4 vs1.0±0.4ng/ml)は有意に上昇した.また,Jでは肝組織像も著明な脂肪肝を呈し,肝内中性脂肪(52±18 vs 19±5 mg/liver protein)が有意に上昇し,BAP/dROM比は有意に低下した(17.5±3.6 vs 23.7±3.0).一方,肝内鉄濃度(153±35 vs 140±22ug/g liver)と上昇傾向を認めるも,血清hepcidin値に有意差は認めず,脾臓の鉄濃度は有意にJで高値であった(1318±407 vs 2588±617ug/g spleen).この現象は雌においても同様に観察され,Nは鉄過剰食に対して感受性が高く容易に脂肪肝や耐糖能異常を発症した.【結論】遺伝子に変化がないとされるC57Bl/6JとC57Bl/6Nにおいても,鉄過剰食に対する反応性が異なる.両群間にhepcidin,肝内鉄濃度の変化が軽度であるのに関わらず,著明な肝脂肪化や耐糖能異常や肝内酸化ストレス上昇を認めた事は,脂肪肝における鉄過剰状態形成はhepcidinのみでは説明できない.今回の検討で,肝臓内よりも脾臓での鉄蓄積の有無が脂肪肝増悪に関与する可能性があると考えられ,マイクロアレイ等の解析を加え報告する.
索引用語