セッション情報 シンポジウム4

肝疾患における金属代謝研究の進歩

タイトル S4-8:

C型慢性肝炎と非アルコール性脂肪肝炎における鉄代謝異常の発生機序の検討

演者 宮西 浩嗣(札幌医科大学内科学第四講座)
共同演者 田中 信悟(札幌医科大学内科学第四講座), 加藤 淳二(札幌医科大学内科学第四講座)
抄録 【目的】C型慢性肝炎(CHC)では,肝細胞内に増加した鉄がROS産生に働き細胞傷害やDNA損傷を引き起こす可能性が想定されている.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)においても過剰鉄がいわゆる2nd hitの一因であるとする報告が散見される.しかし,両者において肝への過剰鉄沈着の原因は明らかとはいえない.本研究では,CHCとNASHにおける鉄代謝について鉄吸収動態,十二指腸鉄吸収関連分子及び肝由来の鉄吸収調節因子Hepcidinに焦点を当てて検討した.【方法】当科で診断したCHC 26例とNASH 27例を対象とした.(1)鉄吸収は早朝空腹時にクエン酸第一鉄100 mgを経口投与し,0-180分後の血清鉄濃度とtransferrin飽和度から評価した.(2)生検十二指腸粘膜における鉄吸収関連分子DMT-1,Ferroportin-1(FP-1)の発現レベルをTaqmanPCRにより検討した.(3)血清Hepcidin濃度をELISAおよび液体クロマトグラフィータンデム質量分析法で,また肝内Hepcidin発現をTaqman PCRで検討した.(4)また腸管上皮様Caco-2細胞をNASH患者血清とともに培養し,鉄吸収関連分子の発現を測定するとともに,鉄調節蛋白であるIRPの活性をEMSAにより解析した.【成績】CHCでは健常人に比べ有意に鉄吸収が亢進し,十二指腸粘膜のFP-1レベルが上昇していた.また血清Hepcidin濃度が低下していた.NASHでも有意に鉄吸収が健常人に比べ亢進していたが,血清Hepcidin濃度,肝Hepcidin,十二指腸DMT1発現がCHCと異なり有意に増加していた.腸管上皮様Caco-2細胞にNASH患者血清を添加し培養したところコントロール血清処理によるものと比べDMT1発現が増加し,IRP活性も増強していた.【結論】CHCでは,Hepcidin産生が低下し,十二指腸FP-1発現が増強していることにより鉄吸収が亢進し肝に鉄貯留が生じていると考えられた.NASHでは鉄過剰を反映して肝Hepcidin発現が増強していたが,十二指腸DMT1発現の増加のため相対的に鉄吸収亢進が持続している.その機序はIRP活性増加による,IREを介したものであることが示唆された.
索引用語