セッション情報 シンポジウム5

食道表在癌に対するESD+α療法の治療成績

タイトル S5-4:

MM以深食道表在癌に対するESD+α療法の治療成績

演者 田中 雅樹(静岡がんセンター内視鏡科)
共同演者 角嶋 直美(静岡がんセンター内視鏡科), 小野 裕之(静岡がんセンター内視鏡科)
抄録 【背景と目的】壁深達度MM以深かつclinical N0の食道表在癌に対しては,診断的治療としてESDを施行し,病理結果に基づき追加治療(CRTや手術)を行う機会が増えているが,予後を含めた長期成績の検証は不十分である.自施設におけるESD+α療法の治療成績を検討する.【対象と方法】2005年3月から2011年8月の期間に当院で食道ESDを施行した350例394病変のうち,壁深達度LPM以浅,非扁平上皮癌,遺残再発,観察期間6ヶ月未満の症例を除外した,93例98病変を対象とした.検討1:対象を「深達度MMかつ深部断端陰性,脈管侵襲なし」の追加治療不要群[不要群]40例/43病変と,それ以外の[必要群]53例/58病変に分け,治療成績を比較検討した.検討2:[必要群]において追加治療の有無による予後を比較した.【結果】検討1:[不要群]/[必要群]で平均年齢は64/67歳,腫瘍長径は28.4mm/35.2mm,[必要群]における組織学的壁深達度(MM/SM1/SM2-)は14/12/32であった.一括切除率に差は認められなかったが,手技時間(63.6分/84.9分)は[必要群]で長く,穿孔を3例認めた.観察期間30.1ヶ月/39.7ヶ月で,再発例を両群に6例ずつ認めた.3年生存率は82.4%/91.6%,疾患特異的生存率は97.1%/95.1%であった.検討2:経過観察を24例,追加治療(RT・CRT/手術)を29(24/5)例に行った.深達度,脈管侵襲の有無に差はなかったが,経過観察例には高齢者が多かった.再発例を両群に3例ずつ認め,3年生存率は92.3%/91.2%,疾患特異的生存率は100%/91.2%であった.【結論】追加治療が必要とされている症例ではESDの手技時間が長く,偶発症が多い傾向にあった.再発は両群から認められ,生存率には差を認めなかった.本検討では追加治療による再発抑制や生存率向上効果は確認できなかったが,追加治療の意義については現在進行中の多施設共同臨床試験の結果を待つ必要がある.
索引用語